迷走する銀行マネーが生み出す不動産市場の過熱について【シリーズ:不動産投資のお金とリスク】

東京オリンピックに向け、好景気への期待感が続き、不動産市場が活況を呈しています。日銀によると2016年の銀行による不動産融資は12兆円を上回り、前年比15%増となりました。
「過熱気味か?」とも言われる現在の不動産市場ですが、今回は過熱を後押ししている銀行融資の背景には何があるのかについて紹介させて頂きます。

膨れ上がる不動産融資

日銀の貸出先別貸出金によると、金融機関の不動産融資の対前年の増加率は2016年では15%増、2015年では6%増となっています。2015年から2016年へと大きく膨れ上がっていることが分かります。
これだけ不動産融資が増えた理由としては、「お金を借りる側」と「お金を貸す側」の双方に利害が一致したためと言えます。

お金を借りる側の事情

「お金を借りる側」の需要が増えた理由としては、主に2つです。1つ目は相続対策のためのアパート建築の増加、2つ目はインフレへの期待感による不動産投資の増加です。
相続税については2015年1月より、相続税法が強化されました。この改正では基礎控除額が下がったことにより、相続税の課税対象者を増加しました。今まで相続税が実際に係る人は国内では全体の4%程度でしたが、この改正により倍の8%程度の人が相続税課税対象者となっています。
また中古マンション価格が上昇してきたことにより、サラリーマン投資家の間でもマンション投資が活発に行われてきました。特にタワーマンションの高層階を転売して売却益を稼ぐ空中族と言われる投資家も登場し、その投資手法が注目を集めています。
2020年までは国内景気は好調が続くと予想されることから、引き続き「お金を借りる側」の不動産融資需要は続くものと予想されます。

お金を貸す側の事情

次に「お金を貸す側」の事情について見ていきます。
少し古い話になりますが、日本の金融機関はバブル崩壊以降、長年にわたり不良債権処理を推し進めてきました。この間、リーマンショックなどの多少の危機もありましたが、中小企業金融円滑化法などの適用を経て、今ではようやく正常な経営状況まで回復したと言えます。
バブル崩壊以降は、銀行は融資先の財務内容を厳しくチェックするように変化していきました。すると必然的に財務内容の悪い中小企業は倒産し、融資を受ける必要のない優良企業が増えていくようになりました。

迷走する銀行マネー

これは銀行にとってみると顧客となる融資先企業が減っていくことを意味します。そのため最近では企業の財務内容だけではなく、企業の行っている事業を評価して融資を行うよう金融庁の方から銀行へ指導がされ始めています。
そのような中、2016年に日銀がマイナス金利を導入しました。日銀がマイナス金利を導入すると、銀行が日銀に預けているお金を引き上げ、貸し出しを積極的に行わないと銀行の収益が圧迫されてしまいます。
そのため銀行は積極的に融資先を探すようになりました。金融機関にとってみると、事業性評価をして企業に貸し出すよりも、不動産に貸し出す方がやりやすいと言えます。不動産融資は不動産そのものを担保に取ることができるため、銀行が最も得意とする融資だからです。
結果として、国内の銀行マネーは企業ではなく、貸し出しやすい不動産へ向かっていったということが言えます。過熱の背景には、お金を必要とする企業よりも、貸し出しやすい不動産へお金が流れたという「お金を貸す側」の事情も見え隠れするのです。

まとめ

過熱気味かといわれる不動産市場ですが、今後も不動産市場へは銀行マネーが流れ続けることが予想されます。しばらくお金を借りやすい状況は続くため、投資家としては銀行の意見を鵜呑みにするのではなく、自分自身の判断が益々重要になってくると言えるでしょう。