まゆつば物の節税対策、「損益通算による節税は本当か?」について【シリーズ:不動産投資のお金とリスク】

アパート経営による節税といえば、「相続税」対策が最も一般的ですが、何やら聞きなれない専門的な言葉を使い「所得税」の節税をほのめかす人たちがいます。その言葉とは「損益通算」です。
不動産投資を知っている人からすると、「アパート経営は損益計算で所得税が節税になりますよ」と聞くと、一瞬ビックリします。「そんな裏技みたいなものがあるのか?」というのが正直な感想です。
そこで今回は、「損益通算による節税は本当か?」というテーマを解説していきます。

損益通算とは

個人の所得とは、給与所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得、利子所得、配当所得、事業所得、退職所得、一時所得、雑所得の10種類に分類されます。サラリーマンの給料は給与所得に該当し、アパート経営による収益は不動産所得に該当します。
サラリーマンがアパート経営を始めると、給与所得と不動産所得を合算した所得に対し、所得税がかかります。それぞれの所得を合算し、1年間の所得を確定させることを確定申告と言います。
通常、給与所得はプラスですが、不動産所得は空室などが発生した場合はマイナスとなることもあり得ます。アパート経営が失敗し、損失が発生した場合は、その「損」と給与所得の「益」と通算(合算)して所得を確定します。これを「損益通算」と言います。
損益通算を行うと、給与所得のプラスから不動産所得がマイナスでされますので、トータルとしての所得は減ります。したがって節税になるという理屈です。

本来はあり得ない節税効果

しかしながら、不動産所得がマイナスというのは、そもそも穏やかではありません。健全な不動産投資の状況であれば、マイナスは発生しないはずなので、損益通算の節税メリットを目的にアパート経営を始めるというのは、おかしな話です。
但し、アパートを新築で購入した場合、初年度は経費が大きいため健全な不動産投資であっても不動産所得がマイナスとなり、損益通算によって節税となるケースもあります。初年度特有の経費としては、不動産取得税と登録免許税、入居者募集のための全室の仲介手数料が発生するためです。
2年目以降の不動産投資は、入居者が埋まっている健全な状態であれば赤字になることはありません。不動産賃貸業の経費には、固定資産税や修繕費、保険料、入居者募集費用等の実際に支出を伴う費用と、減価償却費の実際に支出を伴わない費用があります。
実際に支出が伴う費用は、賃料収入に対して20~30%程度です。支出を伴わない減価償却費は、賃料収入に対して30~50%程度となります。そのため所得の利益率としては20~50%となります。
よってアパート経営は、入居者が入っている限り赤字になることはなく、2年目以降は損益通算によって節税となることはありません。2年目以降も赤字が続くようなアパートであれば、投資としては失敗していますので、早期に売却を検討する必要があると言えます。
ちなみに借入金の元本返済は経費にはなりません。そのため確定申告上の所得(利益)と実際のキャッシュフローは異170302_不動産投資によって夢を叶えた人のストーリーなります。確定申告上の所得が黒字であっても、キャッシュフローがマイナスの物件は、同様に売却を検討する必要があるでしょう。

まとめ

以上、損益通算による節税について見てきました。結論としては、アパート投資により所得税が節税できるのは1年目のみであり、損益計算による節税効果は限定的であると言わざるを得ません。アパート経営による節税効果は所得税ではなく、むしろ相続税の方が遥かに大きいのです。
損益計算による節税を求めるのではなく、きちんと収益を上げる収益性の高い物件に投資するようにしましょう。