原因は節税アパート? 16年は個人向け融資が2割増

アパート投資が大きく盛り上がっていることは、近年さまざまな形で報告されています。たとえば日銀によると、2016年は「アパート投資向けの融資が大幅に増えた年」でした。
不動産投資を手がける人が増え、需要に押されて地価が上昇したことなどが大きな要因とされていますが、もう一つ注目されるものに、節税目的のアパート投資があります。2015年に施行された改正相続税法をきっかけとして、相続税の節税を目的に、個人がアパートを建設するケースが増えているのです。

相続税対策でアパート建設が急増?

2017年2月9日に日銀が発表した「貸出先別貸出金」では、2016年の個人向け融資が前年にくらべ2割近い増加となっていることが報告されました。個人への貸し出しが大幅に増えた原因はどこにあるのか、気になるところです。
不動産取引を巡る動向においては、地価の上昇や金利の低下、不動産投資の活発化など、さまざまな要因が見当たります。そんな中、大きな要因として指摘されているのが「相続税対策としてのアパート建設の増加」です。つまり、相続税の節税を目的として、融資を受けてアパートを建てる人が急増しているのです。

節税ニーズを高めた相続税法改正

近年、社会的な問題の一つとして注目され始めているものに、相続税の課税があります。一部富裕層だけの悩みだった相続税が、今や多くの人の悩みごとになっているのです。
いったい、なぜ相続税について心配する人が増えているのか――原因は、2015年1月1日から施行された改正相続税法にあります。新しい相続税法では基礎控除枠が大幅に減少したことから、課税対象となる人が増加したのです。
旧相続税法における控除枠は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」でした。したがってたとえば妻と子供2人が法定相続人となるケースでは、相続財産の評価額が8,000万円を超えなければ、課税対象とはならなかったのです。
ところが新しい相続税法では、控除枠は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となっています。上記の妻と子供2人が法定相続人となるケースでは控除額が4,800万円となり、相続財産の評価額がその金額を上回ると、課税対象となります。
従来は、相続税を課税される人は被相続人の4%程度にとどまりましたが、相続税法の改正により都市部などでは10%を超える人が課税対象になるものと考えられています。こうした背景があり、相続税の節税を考える人が増加しているのです。

アパート投資なら相続財産の評価額を大幅に圧縮できる

節税策として人気のアパート投資には、どのような効果があるのでしょう? そのことを説明するためには、相続財産の評価方法について説明が必要となります。
相続税は「相続税評価額」に税率をかけて算出されますが、預貯金や現金など、価額が明確な相続財産は額面通りに評価されます。1億円の銀行預金は、1億円の相続財産と評価されるのです。
一方不動産については、一定のルールに従って「相続税評価額」が算出されます。土地部分と建物部分に分けて計算され、土地部分については路線価もしくは固定資産税評価額が基準となります。実勢価格の7~8割程度となるのが一般的で、アパートを建てた場合にはさらに、借家権割合(一般に30%)に借地権割合を乗じた分が減額されます。
建物部分については固定資産税評価額から、土地と同じく借家割合分を除いた価額が相続税評価額となります。固定資産税評価額はアパートの場合、建築費の40~50%程度です。
また、借入は負債として債務控除されるため、アパートを建てることにより、相続財産の評価額は1割以下に圧縮されるケースも少なくありません。

地方都市では需要に合わないアパート投資も

相続税対策として非常に効果が大きいアパート建築ですが、それゆえ賃貸需要を無視して建てられるケースが増えています。特にもともと賃貸需要が少ない地方では、空き家が増加しているにもかかわらず、アパートが新たに建てられることで供給過多に陥るケースが見られるようになってきました。
大きな土地を持つ「地主」が多いエリアでは、相続税の節税目的で建てられるアパートが、地域の需給バランスを悪化させるケースも報告されています。

まとめ

改正相続税法の施行により、相続税の課税対象となる人が増えたことから、今後も節税を目的とするアパート投資は増えるものと考えられます。
アパート投資を手がける人にとって市場の活性化はプラスの要素ですが、賃貸需要がもともと小さい地域ではマイナスに働くこともあるので、一定の注意が必要でしょう。