「実質利回り」はどこまで当てになるのか?物件選びの際の注意点

不動産投資で「利回り」は、物件選定の重要なポイントです。利回りには主に「表面利回り」と「実質利回り」があります。
前者は単純に年間の賃料収入を物件価格で割ったものです。後者は、年間の賃料収入から管理費、修繕費、管理会社への業務委託手数料などの諸経費を差し引いて、物件価格で割ったものです。「実質利回り」は「表面利回り」よりも、より収益の実態に近い値となります。
ところで、この実質利回りは、物件選びにおいてどこまで当てになるのでしょうか。今回は、実質利回りを見る際の注意点や、物件を選ぶ際のポイントについて解説します。

実質利回りの「落とし穴」

不動産広告に掲載されている物件情報から実質利回りを計算して、物件の選定基準にする人がいます。実はこの考え方は危険です。どういうことなのか、実際に数字を使って見てみましょう。

1. 家賃が高く設定されているケース

・ 物件価格 7,000万円
・ 戸数 8戸(家賃月額6万円)
・ 家賃収入 月額48万円(年間576万円)
・ 諸経費 月額4万円(年間48万円)

上記のアパート物件は、実質利回りを簡単に計算すると、(576万円-48万円)÷7,000万円×100=7.54ということになります。現在の市場を考えると、首都圏であれば、かなり良い利回りの物件といえます。
問題は、この物件の「1戸当たり6万円」という賃料が、本当に適正なのかどうかということです。もしかすると、本来は家賃4.5万円程度が適正なのかもしれません。実はフリーレントを数ヵ月分付け、家賃を6万円に設定し、実質利回りを高く見せているのかもしれません。
中には、知り合いに高い賃料で偽装入居をさせ、販売が終わったら退去手続きを行うという悪質なケースもあるようです。この物件の家賃が4.5万円だとすると、実質利回りは約5.5%まで低下します。年間収入では150万円を超える違いです。

2. 管理費・修繕費の増額が予想されるケース

・ 物件価格 500万円
・ 家賃収入 月額4万円
・ 管理費 月額4,000円
・ 修繕費 月額2,000円

この中古区分マンションのケースはどうでしょうか。実質利回りは8.2%程、賃料設定も適正です。築年数にもよりますが、こちらも首都圏では良い利回りといえるでしょう。
しかし、この場合も、上記の情報だけで購入を決断するのは危険です。まずは、修繕積立金と長期修繕計画を確認することをおすすめします。物件によっては、修繕積立金がマイナスになっていたり、長期修繕計画で、大幅な修繕費増額が予定されていたりすることがあります。もし購入後、段階的に修繕費が増額され、修繕費が8,000円となった場合、実質利回りは6.7%まで低下します。

3. 年間空室率が高いケース

家賃設定や管理・修繕費以外にも重要なポイントがあります。年間空室率です。現状が満室でも、入退去の回転が速い物件には注意が必要です。
例えば15平方メートル以下の狭小物件や、住環境が悪い物件は入退去の回転が速くなります。退去が発生すれば、少なくとも半月~1ヵ月、長い場合には3ヵ月以上の空室が発生します。また、最近では広告料を支払わないと入居付けが難しい地域もあります。
そして、現在のレントロールだけでなく、入居者の入居期間も調べましょう。6戸のアパートで、全ての入居者が入居期間2年未満といった場合などは、魅力のない物件だと考えられます。たとえ現状の実質利回りが高くても、空室や広告料が多く発生すれば、実質利回りは低下します。

実質利回りの落とし穴を踏まえた物件選び

それでは、実質利回りの落とし穴をふまえたうえでの物件選びのポイントには、どのようなものがあるのでしょうか。以下にそのポイントをまとめました。

・ 適正賃料はいくらなのか

適正賃料を把握することは重要です。同じ地域・広さ・間取りの物件が、どれくらいの賃料で募集されているのかをポータルサイトなどで確認してください。
そして、築年数、外観、設備などを考慮し、競合物件に対して、自分の物件の賃料はいくらであれば、入居希望者に選ばれるのかを考えましょう。不動産会社だけでなく、購入後に依頼予定の管理会社があれば、そちらに話を聞いてみるのも手です。

・ 賃貸ニーズはあるか

退去が発生しても、次の入居付けがしやすい地域であるかどうかも大切です。どんなに魅力的な物件でも、山の中のアパートは満室になりません。その地域の空室率や人口増加率を確認してください。空室率は、5年毎に行われている総務省の「住宅・土地統計調査」の結果から計算が可能です。

・ 差別化を図れる物件であるか

他の物件と差別化が図れる物件であれば、そこを気に入った人は、長期間入居してくれる可能性が高まりますので、年間の空室率も低くなります。広めの間取りやロフト付きなど、近隣の物件と比較して、賃料以外で魅力を出せるポイントがあるかを確認してください。設備拡充も物件の差別化になります。賃料だけが強みだと、周りの物件に賃料を下げられた時に入居者は離れていってしまいます。

実質利回り以外の視点も大事

「実質利回り」がいくら実際の利回りに近いとはいっても、その数字の裏付けができていないと、将来、想定通りの収入を得られない危険性があります。
不動産広告の情報内容から計算しただけでは、物件の本当の収益性を知ることはできません。実質利回り以外の視点からも、候補物件を確認してみましょう。