差別化の新しい形――「食事付き」賃貸の可能性

商品やサービスを提供する事業においては、競争相手に勝る特別な魅力を持つことが重要なカギとなります。それがなければ価格競争をせざるを得ないため、収益が悪化し、経営が傾く危険性が高まります。
顧客のニーズをくみ取り、応えることで、魅力を創出することが可能です。賃貸物件の経営では近年、「食事付き」というサービスに対するニーズが高まっており、それに対応するものとして安価で栄養バランスのとれた食事を提供する事業者が増えています。

隠れた需要が大きい「賃貸で食事提供」というサービス

 賃貸住宅に住む人がオーナーに求めるサービスにはさまざまなものがあります。中でも「食事の提供」というサービスに対するニーズは実は大きく、社会の変化に伴って、近年ますます増大しています。
「食事付き」を希望する層として一般的なのは、学生や独身の男女ですが、その他にも単身赴任者や高齢者、さらには共働き世帯の増加で「子どもに食事を提供してもらいたい」と望む層も増加しています。
 そういったニーズをくみ取る形で、学生や単身赴任者を対象として「食事付き」をうりにする物件はこれまでにも数多くありました。最近ではその他の層に食事を提供する賃貸物件が少しずつ増えており、中には「管理会社が入居者やオーナーに食事を提供する」という新しい試みも登場しています。

栄養管理された食事で安心と健康を提供

住まいで料理することが難しい世帯の食事は、外食やコンビニ弁当などの「中食」に偏りがちです。ところが一般的にそういった食事は塩分や脂肪分が多く、安心して食べ続けられるものはあまり多くありません。
一方、健康に対する意識から栄養バランスに気を配る人は多く、カゴメ株式会社が行ったアンケート調査によると、4人に3人は「栄養バランスに気を使っている」と回答しています。
自身の食事だけでなく、学生などの場合には親が、単身赴任者の場合には家族が食事の栄養バランスについて懸念することが多く、栄養面をきちんと管理された食事に対するニーズは実はかなり高いと言えます。
賃貸住宅において提供される食事サービスは、そういった需要を受け、栄養バランスに配慮されているものが一般的です。人が暮らす上で必要とされる「衣食住」のうち、食と住の二つを賄うことができるため、入居者にとっては便利で安心な生活を送れるという大きなメリットがあります。

賃貸物件にかかわるプレーヤーが食事でつながる

 食事にはさらに「人々のコミュニケーションをうながす」という作用もあります。賃貸管理会社が食堂を経営するケースでは、管理会社の社員、入居者、オーナーが利用できるものとすることで、賃貸物件の経営にかかわるプレーヤー間の情報共有が進むというメリットが生まれています。
 食卓を一緒に囲む機会があれば、お互いに「ビジネス」の場では語りにくい話がしやすくなります。入居者と直接的なコミュニケーションがとれれば、管理会社・オーナーにとっては、物件の経営管理に役立つ貴重な情報を得る機会が増加します。
 地域住民にも開放すれば、地域とのコミュニケーションを図る場とすることも可能です。賃貸住宅の住人は地域の自治会に加入しないケースも多いので、地域とつながる場を設けることで、トラブルの予防や災害時の被害軽減などの効果が期待できます。

可能性が広がる他業種からの参入

 不動産投資を手がけるプレーヤーがさまざまな業種にまで広がる中、食事提供サービスについては、不動産業以外の他業種からの参入も期待されます。外食や食品小売、物流、農業など、本業を活かせば有利に食事提供を行えるオーナーは少なくありません。
 食事の提供により、競合物件と差別化できれば、価格競争を避けることができます。付加価値の分、家賃を高めに維持できるため、オーナーとして有利にアパート投資を行うことも可能です。

まとめ

 非婚化や高齢化などにより、単身世帯が増える中、食事付き賃貸住宅のニーズは今後も、増大していくことでしょう。「食事提供のノウハウがある」「外食の関係者と親しい」などの強みがあるオーナーにとって、「食事付き」は検討する価値の大きな経営戦略と言えます。