北米で登場!「家賃を入札で決める」という新発想

家賃をいくらに設定するか――資本主義社会では通常、市場原理にしたがって商品の価格が決定されますが、賃貸物件の家賃については、オーナーの「言い値」で決まるケースが大半です。
需給関係がシビアに反映されるケースはまれであり、もっと高くても満室になる物件や、値引きしなければ空室が埋まらない物件が、家賃を調整することなく放置されていることが少なくありません。そんな問題を解消する仕組みとして、アメリカ、カナダでは相次いで「家賃入札」というサービスが登場しています。

入札で家賃を決める時代がやってくる?

 さまざまな業種でいち早く合理的なシステムが導入されるアメリカでは近年、「家賃を入札する」仕組みが普及しつつあります。家賃以外に保証金などの諸条件もオーナーが一方的に定めるのではなく、入居希望者による入札で決まるというもの。
「家賃入札」の最大手、レントベリー社が提供するシステムは全米1000都市で役10万件の物件を対象としています。同じくカナダのバンクーバーに本拠を置くビッドウェル社は、カナダ国内4都市で500物件を登録しており、家賃を入札で決めるという仕組みは北米大陸で広まりつつあります。
 レントベリー社は公開入札、ビッドウェル社は非公開という違いはあるが、いずれも好条件を提示した入札者が賃貸借契約を結ぶ権利を得るという仕組みは同じです。レントベリー社はホームページで、「専門の不動産鑑定士でない限り、適正な家賃を設定するのは難しい」と指摘。高すぎても低すぎても、オーナーにはリスクがあると説明しています。
日本国内でも実は、2000年代に同様の事業を手がける企業がいくつか登場しています。ただしいずれも普及することなく、短期間で手じまいすることになっており、時代を経て家賃入札の「逆輸入」がありえるか、注目されるところです。

アメリカで増える賃貸派 日本の持ち家志向にも陰り

新たなサービスが登場した背景にあるのは、賃貸需要の増加です。若年層の人口が急激に増加しているアメリカの大都市圏では、賃貸を好む人が急増しており、希望する物件に適正な家賃で入居できるシステムとして、家賃入札の人気が高まっているのです。
アメリカ人にくらべ、日本人はもともと持ち家志向が高めですが、近年は雇用の安定性が低下していることなどを理由に、ジワジワと下がりつつあります。代わって賃貸を指向する人が増えており、2013年に行われた「土地問題に関する国民の意識調査」では、「賃貸住宅でかまわない」という人が過去最多となる12.5%に達しています。
賃貸を「仮住まい」と考えるなら、家賃についてそれほどシビアに考えない人も多いでしょうが、「住まいを確保する主たる形態」と認識する人が増えれば、当然のことながら家賃に対する意識も変わってきます。適正な家賃に対するニーズが高まり、将来的には日本国内でも、「家賃は入札で決める」という仕組みが普及するかもしれません。

家賃が信頼できれば気軽に賃貸物件を借りられる

 家賃や敷金礼金など、賃貸物件を借りるにあたって必要となるコスト負担が公正に決められるようになれば、賃貸市場はより盛り上がることが期待できます。一般の人が賃貸物件を探す際にもっとも注目される条件は家賃です。
 
物件の立地、広さ、設備などが家賃と見合っているか、入居者希望者は細かく確認しながら物件を探します。しかしながら家賃は通常、オーナーが自己判断で決めます。周辺にある競合物件の家賃などを参考にすることが多いものの、市場原理に照らしていないため、適切な金額かどうかは不明です。
中には相場と大きなズレが生じているケースもあるため、入居希望者は時間と手間をかけて物件の家賃が適正かどうか、確認する必要があります。入札制度が導入されれば、公正な手続きにより家賃が決まるため、相場に即した家賃が示される可能性が高まります。入居希望者はより簡便に、納得のいく物件を探せるようになり、気軽に賃貸物件を探しやすくなることが期待されます。

市場原理で広がる物件格差

 大きなメリットが期待される「家賃入札」ですが、もし国内で普及することになれば、物件間の格差はより大きく広がると考えられます。現在は需要が少ない地域の物件や、魅力の小さい物件でも、オーナー側の「このくらいは欲しい」という希望により家賃が決められているケースが少なくありません。
入札が一般的になれば、人気の高いエリアや物件では、オーナーが希望する価格を超えて、高い家賃設定が可能になるものと考えられます。一方、需要がなく人気が低い物件の家賃は、市場により低く設定される可能性が高まります。
物件間格差が大きくなり、アパート投資を手がけるオーナーも勝ち組と負け組に二分化される傾向が強くなることが予想されるのです。

まとめ

日本の不動産市場はまだまだ前近代的な風潮が強く、消費者目線に立つことなく物事が決められがちです。商取引において「公正さ」を重視するアメリカで人気を博しているサービスが逆輸入されて普及することがあれば、国内のアパート投資にとって、大きな変革を迫る「黒船」となるかもしれません。