アパート経営で入居者からの家賃交渉!その時どうする?

入居者との家賃交渉は入居時だけでなく、既存入居者との間でも発生します。大家さんとしては、そちらのほうが頭を悩ませるのではないでしょうか。
一般的に家賃は、新築時が一番高く、建物の老朽化に伴い徐々に下落します。新築時に家賃8万円だった部屋が、数年後には6万円台にまで下がっていることもあります。結果的に新築時からずっと住んでくれている入居者ほど家賃が高く、優良顧客へのメリットを提供できていないという矛盾が生じます。
賃貸物件に関する情報も、ネットが主流となった今では、空室募集時の家賃を既存の入居者に隠すことは困難です。しかし、既存入居者からの値下げ交渉をすべて受け入れてしまえば、大家業は成り立ちません。どうすればいいのでしょうか?

同じアパート内での家賃差は問題ない

更新契約書を受け取った入居者が、もし自分が住むアパートに空室があれば、その募集条件を知りたいと思うのは自然なことでしょう。駅前の不動産屋でしか調べられなかった15年前とは異なり、スマホで賃貸物件サイトを検索すれば、苦労せずに募集条件は分かります。その結果、自分の部屋の家賃よりも1万円安く募集していると知ったらどう思うでしょうか。
同じアパートならば、基本的に間取りも広さも変わりませんし、築年数も当然同じです。もちろん、駅からの距離、買い物の利便性、生活環境もすべて同じでしょう。もし更新したい気持ちがあれば、家賃を安くしてほしいと思うのは当然かもしれません。
しかし、同じアパートの部屋でも、実はまったく同じではありません。防犯上、1階よりも2階を好む入居者が多く、道路に面していない部屋のほうが騒音や外部からの視線の問題で選ばれやすいことがあります。角部屋は隣室の音の少なさや窓の多さで人気があります。厳密に言えば、同じアパートでも各部屋で違いはあるのです。そして、個々の部屋の家賃は、貸す側と借りる側の同意に基づく「賃貸借契約」によって決まります。つまり、法律的には双方の同意があれば同じアパートでも家賃はいくら差があっても構わないのです。

値下げ交渉を断るリスク

他の部屋よりも高い家賃を払っていると知った入居者から「家賃交渉」を臨まれた場合、あなたの選択肢は「交渉を断るか」「応じるか」の二つです。交渉を断った場合、入居者が更新をしないというリスクがあります。「敷金・礼金0ヵ月」や「フリーレント付き」など、初期費用を抑えた別のアパーとの部屋を選ぶ可能性は否定できません。
また、退去してしまった際にはリフォームが必要になるかもしれません。リフォーム費用として家賃2ヵ月分、次の入居者が決まるまで、3ヵ月間空室が続いたら、合計で家賃5ヵ月分の損失です。もし値下げ3,000円に応じていたとすれば、損益の回収に7年もの時間を要します。
また、交渉することなく、入居者が更新をしたとしても、大家さんや管理会社に不信感を持つリスクがあります。中にはクレーマーのようになってしまう入居者もいるので注意が必要です。

値下げ交渉に応じるリスク

一方、交渉に応じた場合家賃収入は確実に下がります。その上、物件の価値そのものを下げてしまうリスクもあります。家賃が下がれば、アパートの利回りは下がります。当然、利回りから計算する収益還元法による物件評価額も下がります。
例えば、平均家賃5万円×8部屋のアパートの年間家賃は480万円、利回りが10%だとすれば評価額は4,800万円になります。家賃を3,000円下げると、年間家賃は451万2,000円(マイナス28万8,000円)、評価額は4,512万円(マイナス288万円)になります。年間家賃の減少額の10倍も評価は下がるのです。
この物件評価額の減少を抑える交渉テクニックがあります。例えば、家賃5万円の部屋の入居者が3,000円の値下げを要求してきたとします。「3,000円は無理だけれど2,000円なら」と、単純に下げ幅を小さくするのではなく、家賃を下げずに「更新料無料」にするのです。
更新料1ヵ月(5万円)の場合、家賃を2,000円値下げした場合(2年で4万8,000円)よりも、収入や利益は減りますが2年分だけです。家賃を下げなければ物件評価額は下がりません。3年目以降の影響を侮ってはいけないのです。
インターネットの普及で、あらゆる情報はたやすく手に入り、透明性が進みました。家賃情報も例外ではありません。「隣の部屋よりも高い」と値下げ交渉が入った時に、「すぐに次の入居者を決める自信がある」、あるいは「費用も安く、腕のいいリフォーム業者を抱えている」大家さんならば、悩まずに交渉を断るのも一つの手でしょう。
しかしそうではない場合、値下げ交渉に応じて更新した方が、メリットがあることも少なくありません。大家さんにとってはアパートに長く住んでくれる入居者ほどありがたい存在はありません。「古株の入居者にこそ家賃を下げてあげたい」と、内心思っている大家さんもいるはずです。その気持ちを大切にしながら、冷静かつ柔軟に対応しましょう。