IT重説の本格運用開始で、不動産投資が変わる?

不動産取引に関連する諸制度が専門化・高度化するなか、宅地建物取引業の従事者の資質向上や消費者利益保護の徹底をより一層図るために、「宅地建物取引業法」が改正されました。媒介契約の依頼者に対する報告義務、宅建業者に対する重要事項説明(重説)の簡素化、従業者名簿の記載事項の変更など、一部の規定が2017年4月から施行されました。
また、国土交通省が、不動産取引の重要事項説明における対面原則を見直し、2015年8月末に開始した「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験」の結果を踏まえて、賃貸取引について、「IT重説(ITを活用した重要事項説明)」が2017年10月から本格運用となる予定です。
そもそも重説とはどんな役割があるのでしょうか。「IT重説」で、不動産投資やアパート経営はどのように変わるのでしょうか。今回は、「IT重説」の影響について考えてみます。

従来の重説=対面

宅地建物取引業法では、不動産取引において重要な事項を説明することが定められています。双方の認識の隔たりに起因する争いを防ぐために、重要事項を然るべく説明し、双方が納得した後に契約を結ぶことになっているのです。
賃貸の重説に関して簡単にまとめると、「不動産の賃貸の取引を行う際は、契約までに宅地建物取引士(国家資格を持った者)が、貸主側から借主に対して取引に関する重要な事項を説明し、説明内容を記した書面に双方が記名押印」することとなっています。
これまでこの重説は、必ず対面で行う必要がありました。しかし通信環境の整備が進み、ビデオ通話が一般化してきた現在は、時間や場所を選ばない「非対面での重説」を望む人が増えてきました。

これからの重説=IT

ITを活用した非対面型の重要事項説明は、お金と時間の効率化をもたらします。これにより、賃貸市場の活性化が期待されています。借主の中には、「(契約時に)実際の部屋を見なくても構わない」と考える人がいます。遠方に住む人は、重要事項説明のために、わざわざ不動産会社を訪問する必要がなくなります。時間や交通費を節約することができるのです。
一方、貸主にとっては、賃貸市場が活性化することで大きな恩恵が受けられるでしょう。現地に赴かずとも分かるインターネット情報が、今まで以上に重要視されるようになると考えられます。「家賃」「駅からの距離」などの基本要素への比重が高くなるほか、同じ賃貸物件でも、キャッチコピーや写真、動画の撮り方などWeb上での表現方法の影響が大きくなりそうです。賃貸物件の競争は、ますます激しくなると言えるかもしれません。
さて、メリットの多いIT重説ですが、対面方式と比べて、消費者が説明を十分に理解できないようでは、トラブル増加につながります。そこで、先の社会実験の結果を検討する運びになったのです。
実験では、登録事業者による賃貸取引、または法人取引に限定されました。つまり、個人が売主、または買主となる売買は除外されました。また、テレビ電話・テレビ会議など、動画と音声を同時に双方向でやり取りできるシステムの使用を必須としています。
2015年8月から2017年1月末までに行われた社会実験では、IT重説による賃貸取引が1,069件、法人間売買取引が2件でした。賃貸仲介に関しては、目立ったトラブルが発生しなかったため、本格運用に移行することになったわけです。
社会実験のためのガイドラインによるIT重説は次の通りです。
・ 登録不動産事業者は、対借主と対貸主との間でIT重説の同意書を作成 ※対面かITの選択権も説明
・ 重要事項説明書の事前送付 ※書類必須
・ ビデオ電話またはビデオ会議システムの重説 ※録画必須
・ 借主は重要事項説明書に記名捺印して返送

社会実験では、貸主・借主とのIT重説の同意についてはWebで完結できるものの、重要事項説明書は書面でのやりとりが必要とされています。これが電磁的方法で交付可能となれば、送付と返却の手間、そして費用が軽減できます。書面と電磁的方法では、記載内容に差異が生じないと考えられるため、今後は借主の承諾のもとに、電磁的方法を可能にするための検討が行われると考えられています。

これまで以上に、インターネットで物件の魅力を表現

IT重説の普及は、今まで以上にインターネット情報に重きが置かれることを意味します。賃貸物件のオーナーとして成功できるかどうかは、インターネットで物件の魅力をどう表現できるかにかかってくると言っても過言ではありません。
10月に始まるIT重説に向けて、国土交通省の検討事項や決定事項の公表に関心を向けていきましょう。