マンション・アパート経営者は「電力自由化」をどう考える

2016年4月に電力自由化が始まったものの、「実際に電力を切り替えた」という人はどのくらいいるでしょうか。経済産業省の「電力小売全面自由化の進捗状況 2017年2月」によると、2016年末において全国で電力を切り替えた世帯は約257万世帯と、全体の4.1%にとどまりました。
電力自由化への世間の期待はまだ低いようですが、マンション・アパート経営者は、この問題をどのように考えたらいいのでしょうか。そこで今回は、「新電力の安定性」、電気料金の大幅削減を可能にする「高圧一括受電サービス」、個別契約の「共有部の電力切り替え」の3点に注目してみました。

インフラの安定性「既存電力vs新電力」

電力自由化で契約の選択肢は3つになりました。なお、冒頭で触れた「切り替えた世帯」は以下の3にあたります。
1.既存の電力会社(東京電力など各地域電力会社(一般送配電事業者))と今まで通りの契約を継続
2.既存の電力会社の「お得な」新プランに切り替え
3.新電力会社と新たな契約を結ぶ

既存の電力会社は、これまでトラブルなく使えたという実績に加え、一貫して電気が届けられることから、安心感を抱く人が多いようです。確かに、生活の基盤となるインフラの安定性は重要です。ましてや、複数の物件を所有する大家としては、一般の方よりも慎重に考える必要があるでしょう。
それでは、新しい電力会社のサービスは、「安かろう悪かろう」なのでしょうか。まず、安定性についてですが、新電力に乗り換えたからといって、停電が増えるわけではありません。「送電網」は共有で使用します。新電力も含めて、すべての電力会社が、同じ送電網に電気を流し、各家庭に電気を届けます。ですので、特定の電力会社の顧客だけが停電するということはありません。
また、新電力だからといって、災害時の復旧が著しく遅れることもありません。災害時の停電は、電線の切断など、配電網の事故が原因であることが多いのですが、この復旧は今後も、地域独占の「一般送配電事業者(東京電力など)」が管理する領域です。
一般送配電事業者には中立性が求められるため、特定電力会社だけが停電しにくいとか、停電した時の復旧が早いとかいうことはありません。経済産業省資源エネルギー庁もそう公言しています。それでも慎重を期すべきだとお考えの方は、もうしばらく様子を見てもいいのかもしれません。

共用部で20〜40%削減、マンション高圧一括受電

マンションオーナーが電力を選ぶ際の選択肢の一つ「マンション高圧一括受電」とは、マンション一棟を一人の利用者として考え、電力会社と一括で高圧電力契約を結ぶことによって、電気料金を下げるサービスです。
簡単に説明すると、マンション全体で使用する電気量をまとめることで、大口ユーザー向けの安い電気料金の適用を受けるというものです。一般家庭の低圧電力自由化に先駆けて始まりました。
ただし、高圧電力は低圧に変換しないと一般家庭で使えません。そのためマンションに変圧器を設置する必要があり、そうしたサービスを行う業者と契約を結ぶ必要があります。その費用を差し引いても、専有部で5〜10%程度、共用部で20〜40%程度の電気代を削減できるといわれています。
既存分譲マンションでは全戸の合意が必要になるために、現在はゆっくりと増えている状況ですが、過去5年間に建設された一棟あたり100戸を超える新築マンションの40%超で採用されています。
賃貸物件でも、共用部分の契約容量が50kW以上(30戸以上のアパート・マンションが目安)の場合は、一括受電の検討に値します。エレベーターなど共有部の電気量が大きい物件は、電気代削減が見込めるでしょう。
中古分譲マンションよりも、オーナーの判断で進められる賃貸物件の方が、スムーズに移行できるかもしれません。既存入居者も安い電気代は歓迎するでしょう。ただし、既に電力切り替えが済んでいるような入居者には丁寧に説明して理解を求め、新たな入居者には、物件概要に一括受電に関する情報を明記するなどの施策が必要になります。

共有部の電力切り替え

一括受電の規模に満たないアパート・マンションでも、廊下や階段の電灯など、共有部の電気を新電力に変更することが可能です。電灯だけならば、一般家庭と同様に「契約種別:従量電灯B」などについて安い電力会社を選べます。電気料金の比較サイトで、さまざまな検証が可能です。都内の物件で20A契約、電気代が月5,000円程度でも、年間で約1,000円の節約が可能でしょう。
ただし、エレベーターや貯水槽の動力などの設備を、「契約種別:低圧電力」で契約している場合は、すべての新電力が対応しているわけでありませんので、契約の際には注意が必要です。低圧電力は1 kWh(電気を1時間使用した場合の電気量)あたりで基本料金が決まり、使用料に応じて電気料金が決まる仕組みですが、必要以上の契約をしている場合があるので、これを機会に確認することをおすすめします。

経費を削減できるチャンスを逃さないで

新電力会社については、「停電の多さ」「災害時の復旧の遅さ」などの不安定なイメージが、一般的に抱かれているようです。しかし、マンションやアパートを経営するオーナーの立場としては、経費が少しでも削減できるチャンスを逃がす手はありません。
今回紹介したような「高圧一括受電サービス」や、共有部分の新電力会社への切り替えなどを検討してみてはいかがでしょうか。