120年ぶりの民法大改正!賃貸オーナーが特に注意すべきポイントは?

2015年3月、民法の一部である「債権法」を改正する法案が国会に提出されました。今国会で成立する見通しです(2017年5月現在審議中)。
この改正案が成立すれば、1896年に債権法を含む「民法財産編」が制定・公布されてから、実に120年ぶりに民法が改正されることになります。実際に施行されるのは、2019~2020年となる見通しですが、この改正は不動産業界のみならず、さまざまな業種に影響を与えるようです。
今回の民法改正において、賃貸オーナーへの影響が特に大きいと思われるものと、注意するべきポイントについて解説します。

敷金の取り扱い

退去時の敷金返還をめぐり、貸主と借主の間でトラブルになることがあります。民法改正後の内容には、「自然摩耗や劣化については借主が負担する必要は無い」ということが明文化される予定です。つまり、自然摩耗や劣化についての修繕費用を敷金から相殺することが違法となります。
「敷引」という、退去時に敷金から一定額を差し引くといった契約も、何の名目で費用を徴収するのかを、賃貸契約書上に明記することが必要になると予想されます。
自然摩耗や劣化についての記載ができないとなると、ルームクリーニング費用や退去時の事務手数料などの名目にすることになりますが、相場とかけ離れた金額にすることもできないので、現状見られるような「敷引:家賃1ヵ月分」などの契約は、今後、難しくなるかもしれません。
敷金や敷引の契約ができないのであれば、最初から「礼金」として受け取るという方法もありますが、礼金額が多い賃貸物件は、少ない物件に比べて、入居者に敬遠される傾向にあるため、判断が難しいところです。

修繕の義務化

現在の民法には、貸主の「修繕義務」があります。それに加えて改正法では、以下の内容が追加される予定です。
・ 借主の故意・過失による損傷については、貸主に修繕義務が無いこと。
・ 貸主が修繕の必要性を知ったにも関わらず、相当の期間内に必要な修繕をしない場合、もしくは緊急の場合は、借主が自分で修繕ができること。

以前から、無過失の借主が行った修繕費用については、貸主が負担することが判例により認められていましたが、今回の改正で明文化されるため、借主の自己判断による「緊急性」から修繕を行う可能性があります。
もし貸主が、室内の不具合を加味して家賃を減額していたとしても、契約書に該当箇所の不具合と家賃減額について関係性を明記しておかないと、借主が勝手に修繕し、修繕費用を請求されるというトラブルにもなりかねません。
また、不具合に対して貸主が「賃貸契約の時に気付かれなければいい」「文句があるなら出て行ってもらえばいい」といった対応を取っていると、後々さらなるトラブルに発展する可能性があります。民法で明文化される以上、これまで以上に、借主が保護される考えられます。
今後は、対象物件の現状と賃貸の条件について、借主にきちんと理解してもらえるような説明や、契約書への明文化が必要になると考えられます。また、貸主が「トラブルがあった時には、いつでも声をかけてくださいね」と借主に働きかけ、両者の良好な関係を築く努力が、上述のような借主の自己判断による修繕トラブルを防ぐことにもなります。

連帯保証の責任範囲

連帯保証については、連帯の「極度額」をあらかじめ定めなければならないことになる予定です。連帯保証人が際限なく負担を求められる事態を防ぐために追加された内容です。
例えば、賃貸借契約において、極度額を契約書に記載することで、連帯保証人になることを敬遠される可能性がありますし、万が一、極度額を上回る損害を被った場合の対応についても考慮する必要もあります。
こうした理由から、これからの大家さんは保証会社の利用がますます必要になってくると予想されます。とはいえ、すでに連帯保証人を立てており、保証会社を利用していない入居者に、保証会社の費用負担を納得してもらうのは、至難の技となりそうです。こうした入居者の保証会社利用料の負担方法については、何らかの方策を考える必要もありそうです。

民法改正の動向に注視

民法改正で契約書の内容が今まで以上に大切になります。曖昧な表現や、法に違反した記述によって、後々トラブルを起こさないようにすることが大切です。入居者とのトラブルの多くは、コミュニケーション不足が原因といわれています。借主とのコミュニケーションを大切にしてくれる管理会社を選んだり、自ら借主とコミュニケーションを取れるよう工夫したりするなどの配慮が必要になるでしょう。
民法改正の動向に注視しながら、入居者とより良い関係を築くことをおすすめします。