街や暮らしに変化も…… 進む観光と居住の融合

近年、海外からの観光客が急増しています。もともと積極的に誘致を進めてきた観光都市だけでなく、最近では観光客の嗜好が多様化しつつあり、主に「居住の場」として成り立ってきた街にも海外からの来訪者が大挙してやってくるようになりました。
インバウンド景気による地元経済の活性化がメリットとして意識される中、一方ではトラブルや課題も目立つようになっています。「観光」と「居住」をどのように融合し受け入れていくのかが、暮らし方を考える上でのテーマになりつつあります。

急増する海外からの観光客が住宅地にも

円安や中国、タイなどアジア新興国の経済発展を受けて、日本を訪れる外国人観光客が増えています。2011年には622万人だったのが、2016年には2404万人と、5年で約4倍という急増ぶりです。
政府も「東京オリンピック・パラリンピック」が開催される2020年に4000万人の外国人観光客を迎えるという目標を掲げて積極的な誘致政策を続けており、外国人観光客の増加傾向は今後も続くものと予想されます。
外国人観光客については近年、数の増加だけでなく質の変化も見られるようになりました。有名観光地や爆買いできるショッピングエリアに集中していたのが、嗜好の多様化によりさまざまな魅力を持つ地方を訪れる人が増えています。
地域固有の観光資源を活かして外国人観光客を呼び込むことができれば、地方経済の活性化につながります。そのため政府にも「地域資源を活用した観光地魅力創造事業」を選定して支援するなど、この気運を促進する動きがあります。
そういった歓迎ムードが全国的に広がる一方、地方に流れた外国人旅行者が住宅地にまで入り込むことで、さまざまな軋轢が生まれるようにもなってきました。

観光客の増加がもたらすメリット

外国人観光客の急増は、国内各都市で大きなメリットとデメリットをもたらしつつあります。特にこれまで観光地として外国人観光客の受け入れに注力しておらず、対応になれていない街にとっては、新しいテーマとして強く意識されるようになりました。
メリットとして注目されるのは、やはり地域経済に与えるプラスの効果です。経済の活性化とそれに伴う雇用の増大は、少子高齢化に悩む多くの地方自治体にとって神風とも感じられる効果をもたらしています。
不動産市場においても、「需要増で不動産の資産価値が高まる」「民泊により空き家が減少する」など、歓迎すべき影響が多々見られます。
また地域における国際交流の活発化も、大きな可能性を秘めた歓迎すべき影響といえるでしょう。海外からの関心が集まることで、観光以外の地域産業が世界に進出する足がかりを得られるなど、さまざまな可能性が広がります。

意識されるようになったトラブルやデメリット

メリットがある一方、住宅地では特にデメリットとして意識されるトラブルも増えています。文化の違いや人が集まることによって生じるものが多く、たとえばゴミや吸い殻のポイ捨て、つばや痰を吐く、民家の敷地内に侵入するなどの行為が報告されています。
このようなトラブル・迷惑行為が頻発すると、外国人観光客の増加は「生活環境を悪化させる要因」と認識されるようになってしまうでしょう。
また、交通インフラに余裕がない住宅地においては、渋滞が大きな問題になるケースも増えています。団体客は大型バスを連ねて移動することが多いため、住宅街ではそれまでになかったひどい渋滞を発生させることもあります。

対策や考え方を整理して追い風に

外国人観光客増加の恩恵を享受するためには、さまざまな対策や考え方の整理によってデメリットを抑え、メリットを拡大することが重要です。たとえば自治体が主体になって、道路の整備や流入規制、公共交通網の整備など、街作りに観光客受け入れの工夫を導入すれば、交通渋滞を軽減することができます。
文化的な違いに基づくトラブルについては、多言語による注意書きの掲示など、相互理解を深めることで軽減することが可能です。
メリットを拡大したい事業者にとっては、これを商機ととらえて外国人旅行者をビジネスのターゲット層に据えてみることで、新たな展開が広がるかもしれません。
空室に悩むアパートオーナーが民泊を手がけたり、外食店の経営者が旅行者を意識したメニューを提供したりするなどの工夫を導入すれば、外国人観光客の増加は強い追い風となります。
事業とは縁のない個人でも、住まいの工夫で、国際交流を楽しむことが可能です。たとえばオープンハウスにしたり、オープンガーデンにしたりといったアイデアで生活をより充実させることもできるでしょう。


少子高齢化が進み国内経済が縮小していく中で、外国人観光客の増加は地方都市にとって、大きなメリットをもたらす追い風です。不動産市況にとっても需要増による好影響が期待できます。
現在は観光客の急増によるトラブルが強く意識されがちな過渡期ですが、官民が一体となって工夫することで課題はクリアすることができるでしょう。今はまさに、観光と居住の融合が求められているときなのです。