増える所有者不明土地 深刻化する問題にようやく解決策

土地の所有者は通常、登記簿台帳を閲覧することで確認できます。ところが近年、50年以上も登記が更新されず、「登記簿上の所有者が亡くなっている」「所有者を特定できない」「所有者の所在地がわからない」といった土地が全国的な問題になっています。
こうした「所有者不明土地」は、街並みの整備や防災など、公共性の高い土地利用を妨げる要因になるため政府では対策となる仕組み作りを進めています。

2割以上の土地が「所有者不明」

法務省がこのほど発表したサンプル調査の結果によると、国内の土地のうち最後の登記から50年以上経過している土地は平均で22.4%にのぼります。
この調査は大都市圏や中山間部の全国10地域、10万筆の土地が対象で、宅地では8%、田畑22.8%、山林31.2%が所有者不明の可能性が高い土地と判明しました。換金価値の低い土地ほど、所有者不明になりやすいのが実態です。

相続時に登記されず放置されると不明に

これらの土地が所有者不明になるのは、主に相続時に所有者変更登記がなされていないのが原因です。土地を相続した相続人は通常、不動産登記簿上の名義を書き換える手続きを行います。しかし、この手続きは実は義務づけられたものではないのです。
土地所有者が転居した場合の届出も任意となります。したがって、土地所有に関する情報が的確に管理されていないのが現状です。不動産の登記には登録免許税や司法書士費用などがかかることもあり、省略されることが少なくありません。
親から子供へ、さらに孫へ。相続が続くほど、法定相続人の数は増え、相続人同士の関係性も薄くなります。登記簿から所有権を持つ人物全員を特定するのが難しくなるケースも多々あります。
また、そもそも土地という財産に大きな換金価値がなくなりつつあるのが現状です。そのため、所有権を持つ人がそのことを自らの所有権を認識していないこともあります。

土地の有効利用を妨げる大きな要因

登記簿上の所有者が不明になると、「土地を有効利用するのが難しくなる」という問題が発生します。道路の敷設や街区の整理といった公共事業を進めても、所有者不明の土地があると、土地利用の同意を得ることができません。それが原因で計画が頓挫してしまうことが少なくないのです。
ある地方自治体が所有者不明土地を道路用地として買収を試みたケースでは、100人以上の所有者を探し出し、同意を得るのに大きなコストと労力を要したと報告されています。
防災や環境保全など、土地の有効利用が必要となるケースは多々あります。東日本大震災の被災地では1日でも早い復興を目指して、街区の整理など新たな街作りが進められています。このケースでも、所有者のわからない土地が復興の妨げになっています。
地方自治体にとってはさらなる負担となります。土地の所有者がわからないと、固定資産税を徴収できないのです。本来得られるはずの税収が減少するため、行政サービスに影響が出ることも心配されています。

公的な事業に利用できるよう制度改革

所有者不明土地の問題を軽減するため、政府では公的な事業で所有者不明土地を利用できるような枠組み作りを進めています。
検討されているのは「道路敷設や公園の整備、再開発事業といった公的な計画に必要とされる土地については、地方自治体に利用権を認める」というもの。
所有権はこれまでどおり保全される一方で、土地利用が始まった後に所有者が判明した場合には一定の金銭補償が行われます。その他の詳細についても、制度設計を進める中で固めていくことが予定されています。
私有地である土地は、当然、個人の資産です。しかし、これらの土地は地域の暮らしに影響を与える可能性があることから、公共性の高いものでもあります。所有者不明の不動産を地方自治体が有効利用できる枠組みが導入されれば、街作りが変わり、地域の不動産市況にも影響が及ぶことが考えられます。
早急な仕組み作りが新たな課題として求められています。