アパート融資の顧客紹介手数料に金融庁が是正を指示

アパート投資の過熱で、オーナー同士のみならず、資金供給を担う金融機関の競争も激化しています。そんな中、建設事業者から顧客紹介手数料を受け取っている地方銀行の存在が金融庁の調査で明らかになりました。
「銀行の紹介」には信頼を担保するお墨付き的な意味合いが。その価値を利用して手数料収入を得ようとする行為は、違法ではないが問題だという見方が広まりつつあります。

利益相反? 金融庁が「地銀の紹介」是正に

金融庁はこのような紹介手数料を受け取る行為を是正するよう、銀行に対して求める方針を明らかにしました。
不動産業に対する融資が急増する中、金融庁は地銀12行を対象に融資実態の調査を実施。一部銀行が紹介手数料を受け取っている実態が発覚し、「利益相反」の疑いがあると判断しました。
一部地方銀行では、顧客に対して相続税対策などを口実に賃貸住宅の建設を提案。融資の勧誘を行う際に「信頼できる建築会社を紹介する」といった流れで建築会社を紹介していました。

マイナス金利と改正相続税法で加熱

近年、銀行が手がけるアパート融資が加熱。2016年の融資額は前年比21%増の3兆7860億円となりました。その背景にあるのはマイナス金利の導入と改正相続税法の施行という経済・法律面の動向です。
マイナス金利の導入により、銀行が日銀に資金を寝かせていると金利分の資金を失うことに。そのため、銀行は融資先を探す必要に迫られました。こうした要因で、銀行が不動産という担保があるアパート融資に資金を投入するようになったのです。
また、改正相続税法の施行で課税対象となる資産家が増加したこともアパート融資の拡大を後押し。相続税対策を必要とする顧客が増えたことから、アパート建設による節税を勧めやすくなりました。
これらを背景にアパート融資を手がける金融機関が増加。そこで発生したのが金利の引き下げ競争です。競争の激化で収入が減少した分を埋めるため、建設事業者からの手数料収入を求めるケースが増加しました。

「銀行の紹介」が抱える問題点

顧客を紹介して対価を受け取る行為そのものは金融法に定められた銀行の業務の一つである「ビジネスマッチング」とみなされ、違法にはなりません。しかし、手数料のシステム上、建築請負額が増大して顧客のコスト負担が大きくなるほど銀行の手数料収入が増えます。そのため、利益相反が生じるという問題点をはらんでいるのは事実です。
たとえば、手数料率が3%の場合、顧客が負担する建築請負額が4000万円。そこから銀行が受け取る手数料は120万円です。しかし、建築請負額が5000万円に跳ね上がれば銀行の手数料は150万円に増えます。
また、「銀行が紹介するアパート投資は、必ずしも将来を見据えた現実的なシミュレーションがなされていない」と指摘する声も。アパート投資は地域性が高く、エリアの需給バランスによっては空室リスクや家賃下落リスクといった損失を引き起こす問題も浮上します。さらに、地域によっては人口減や世帯数減などの採算悪化に繋がるリスクも。銀行が顧客に示すシミュレーションにはこれらの要素が織り込まれていないケースが少なくありません。

投資家に求められる自己責任の事業計画

アパート投資はあくまで自己責任で行うべきものです。投資を手がけるにあたって作成する事業計画についても、銀行などに丸投げしてはいけません。
投資家の中には「銀行がお金を貸してくれるのだから大丈夫」と考える人がいます。しかし、「融資審査に通る事業計画=収益が保証されている」と判断するのは危険です。また、「銀行の紹介」というのは事業計画を検証するための判断材料にはならないと考えておくべきでしょう。
アパート投資を始めるにあたっては、あくまで、立地やエリアの将来的な需給バランスなどを投資家自身がしっかり判断することが不可欠です。自らの手で検証を行いましょう。

まとめ

アパート投資には情報の有無が成否に大きく関わるという「情報産業」の側面があります。信頼できる建築事業者の紹介は投資家にとって価値の高い情報であり、手数料という対価を目的に金融機関がそれを歪める可能性があるという事態は疑いを招きかねません。
金融庁の動きにより不動産投資を巡る環境が正常化されていくことは、アパート投資に参加するすべてのプレイヤーにとって歓迎するべきことといえます。