東京都が容積率緩和で旧耐震マンション建て替え促進

国内には旧耐震基準下で建設された分譲マンションが多数現存しています。これらのマンションは、大地震が起こると倒壊の恐れがあります。この問題に対して、政府は関連法規を整備するなどして、新耐震基準をクリアする物件への建て替えをうながしてきました。
しかしながら、実際のところ建て替えは進んでいないのが現状です。その背景には区分所有者の合意形成が難しいなどの事情があります。そんな中で、旧耐震基準マンションを多く抱える東京都が「容積率の緩和」により建て替えをうながす施策を推進しています。

容積率緩和で旧耐震マンションの建て替えうながす

東京都内には約5万3000棟の分譲マンションがあります。そのうち1万2000棟が旧耐震基準に基づいて建てられた物件です。
大規模地震にも耐えられるような新耐震基準が施行されたのは、1981年5月のこと。旧耐震基準に基づいて建てられた物件は居住する分には問題ありませんが、大地震が発生した際の被害については想定されていませんでした。
大地震の被害軽減を図って、2002年には「マンション建て替えの円滑化等に関する法律」(円滑化法)を制定。2014年には「マンションの建て替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律」(改正マンション建て替え円滑化法)を制定して建て替えをうながしています。
しかし、建て替えはなかなか進んでいないのが現状です。これをうけて、建て替えをさらにうながすための独自政策として、東京都が「容積率緩和」を打ち出しました。

増えた戸数で建て替え費用を賄う

土地の容積率は「基準容積率」と、それぞれの土地が持つ事情に合わせて定められる「割増し容積率」の和で成り立っています。分譲マンションの建て替えをうながす「容積率緩和」は、このうち「割増し容積率」の上限をこれまでの300%から400%に引き上げるというものです。
都が定めた対象地域内にある旧耐震マンションのうち、一定の条件を満たす物件に対しては容積率の割増しを行います。容積率が割増しになれば、マンションを建て替えた際に、より多くの戸数を設けることが可能です。増加分は区分所有者全体の資産となるため、売却資金を建て替えの費用に充てることができます。
マンションの建て替えには専門的な知識や技術が不可欠です。容積率緩和で参入した事業者が利益を得やすくなり、民間デベロッパーの協力もあおぎやすくなるとみられています。

建て替えを阻む3つの問題

以上のように行政が建て替えを促す施策を用意しながらも、これまで思い通りに進んでこなかったことには3つの理由があります。

1. 合意形成が難しい

マンションの建て替えを実施するためには、区分所有者の4/5の合意が必要だが、それぞれに事情によって有効な数の合意を得るのが難しい。

2. マンション住人の高齢化

住人の高齢化が進んでいるため、建て替えに要するコストを賄えない人が増えている。

3. 建て替えを事業化できない

建て替えにより資産価値を大きく高められる場合には民間のデベロッパーが参入してくれるが、そうでなければ参入の見込みは高くない。

恩恵を受けられる物件、難しい物件

今回施行される容積率の緩和により、都内では旧耐震マンションの建て替えがある程度は進むものと思われます。ただし、建て替えが進むのは容積率緩和の恩恵によって資産価値が大きく増大する物件に限られるというのが大方の予想です。
資産価値の増大がなければ、収益性を担保することはできません。そのため、民間のデベロッパーを望むことも難しくなります。資産価値の増大が見込めるのは、都心へのアクセス性が高いなど、立地に優れた物件だけ。それ以外の物件については、容積率の緩和は建て替えをうながす追い風になりません。区分所有者だけで建て替えを進めるのは困難なのです。

まとめ

大地震は日本国内に住む限り、避けることができないリスクです。しかし、その被害は住まいの建て替えなどにより大きく軽減することができます。分譲マンションにおいては、そのコストをどのようにして賄うかが建て替えの成否を決める大きなカギです。
東京都が導入する容積率の緩和は、建て替えの収益性が確保される物件を増やします。立地のよい物件に限られますが、建て替えの促進をある程度は進めるはずです。