実験継続で実現間近?IT重要事項説明とは

賃貸や売買などの不動産取引を行う際に欠かせない手順の一つに「重要事項説明」があります。契約に先立って、物件に関する重要な事柄を貸主・売主が説明するもので、不動産取引においては非常に大切な手順であるため、これまでは対面で行うよう規定されていました。
この規定を改善する動きが、最近になって加速しています。インターネットの進化・普及により、対面するのとそれほど変わらない精度のコミュニケーションをとることが可能となりました。そのため、「テレビ電話機能」を使う「IT重説」を認める方向で政府の対応が進んでいるのです。

ネットで重説「賃貸は問題」なしで売買も?

一般の商品とは異なり、不動産は個別性が高いため、物件の特性がわかりにくいという問題があります。そのため、宅地建物取引業法では、宅地建物取引士による「対面での」重要事項の説明が義務づけられてきました。
この重要事項説明について、インターネット回線を利用したテレビ電話などで行えるよう規定を緩和する実証実験が2015年8月から行われてきました。背景にあるのはネット利用者の増加やテレビ電話技術の進歩です。
実証実験では2017年1月までに賃貸取引1069件が行われ、トラブルは確認されませんでした。売買は2件どまりでしたが、今後は普及を目指してさらなる実験が続けられます。

IT利用で手間とコストを省ける

不動産取引に際して重要事項説明の実施を義務づけられている貸主・売主、説明を受ける借主・買主双方にとって、IT重説が認められる意義はかなり大きいと言えます。
対面での説明を行うためにはお互いが直接会う必要があるため、あらかじめ日時を調整してアポイントをとる必要があります。しかし、日々の業務で忙しいなかでの対応は難しく、売主や賃貸物件オーナー、仲介会社などにとって大きな負担でした。
また、借主・買主が遠方にいる場合にはわざわざ現地まで行き来しなければならないため、旅費もバカになりません。IT重説なら、このような時間や交通費を節約することが可能です。
売買契約については慎重さが求められますが、IT重説を希望するかどうかは買主側が選べます。物件のことが十分理解できている場合には、直接会う手間を省くこともできるのです。

顔を見て説明する必要がある場合も

しかし、すべてをIT利用で済ませることができると考えるのは早計です。重要事項説明の難易度は、物件の性質や説明を受ける借主・買主の理解度などによる個別性に左右されるためです。
たとえば、築古の中古物件はそれぞれ状態が大きく異なります。そのため、わかりにくい事柄が多く、表情や雰囲気などから理解の進み具合を確認しつつ、丁寧に説明を行う必要があります。一方、新築物件の場合は、不具合が少なく、スペックデータ通りであることがほとんど。ITによる説明でもそれほど問題はないでしょう。
借主・買主も、部屋を借りるのは初めてという人がいる一方、何度も引っ越しを経験している人や、投資経験が豊富な人、企業の担当者をはじめとした不動産取引に慣れている人もいます。重説の目的は後でトラブルが起きないよう、借主・買主に物件の特性を十分理解させることにあります。テレビ電話では理解の度合いを説明する側が相手の特性を把握しにくいこともあるため注意が必要です。
また、スマートフォンの普及で、若年層ではパソコンを持つ人が減っていることも、IT重説の普及を考える上では逆風と言えます。スマホの小さな画面では説明が不十分になりかねないため、対面するしかないというケースも今後は増えるかもしれません。

アパート投資においてはメリットに期待

アパート投資では賃貸借契約を結ぶシーンが多く、特に春と秋の転居シーズンには契約業務が集中します。しかし、遠方から転勤してくる人がいる場合には、忙しいなかでも日程を細かく調整することが求められます。
重要事項説明は管理会社が手がける業務ですが、おざなりにすると後でトラブルにつながる危険性もあります。そのため、負担の大きな業務の一つです。IT重説の導入でその負担が軽くなれば、オーナーにとっては管理コストの軽減などといった副次的な効果も期待できます。
重要事項説明の目的は対面することではなく、物件に対する十分な理解を共有することです。その目的が達せられるのであれば、対面にこだわる必要はありません。省力化・省コスト化が実現できるIT重説のメリットは大きく、本格導入されれば一定の割合で選択されるものと思われます。