節税と言っても喜べない損益通算を使ったアパートによる節税について

アパート経営の節税では、相続税の節税が有名です。あまり知られていませんが、アパート経営により所得税が節税になる場合もあります。
アパート経営による所得税の節税とは、損益通算による効果です。そこで今回はアパート経営における損益通算の効果による節税について見ていきます。

損益通算とは

個人所得には、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得、給与所得、退職所得、利子所得、配当所得、一時所得、雑所得の10種類があります。
サラリーマンの給料は給与所得です。個人が土地や建物などの不動産を貸し付けることによって得た所得は不動産所得になります。その不動産所得が赤字となった場合には、給与所得と損益通算をすることが可能です。
損益通算とは、10種類の所得のうち、不動産所得や事業所得、山林所得、譲渡所得の4つの所得が赤字になった場合、その所得を他の所得(給与所得等)から控除できる仕組みです。
例えば、年収800万円の給与所得者が、アパート経営で▲300万円の赤字になった場合、確定申告によりその人の所得は500万円として課税されることになります。
そのため、アパート経営をすることで、所得税が節税になる場合があるということです。

健全なアパート経営の経費率

しかしながら、そもそもアパート経営が赤字というのは、心穏やかではありません。
アパート経営では、通常、土地建物の固定資産税および都市計画税、建物の保険料、管理委託費用、修繕費、入居者募集費用等の費用が発生します。これらは賃料収入に対して、高々30%以内に収まることが健全なアパート経営になります。
賃料収入から、固定資産税等の経費を差し引いた純収益をNOI(Net Operating Income)と言います。NOIを計算するための経費には借入金の元本返済は含まれません。
また会計上は、実際に発生する経費の他、減価償却費が発生します。減価償却とは、建物等の取得原価を各会計期間に、計画的・規則的に費用計上していく会計上の処理のことを言います。実際に支出されていくお金ではありません。
満室稼働をしているアパートの場合、減価償却費は大きくても賃料収入の50%程度になります。
会計上の利益とは、NOIから減価償却費を引いたものになります。賃料収入に対して、実際出費する費用が30%、減価償却費が50%だとすると、アパート経営における会計上の利益は、賃料収入の20%(=100%-30%-50%)程度になります。

重要なのはキャッシュフロー

ところが、空室が増えると、NOIがプラスであっても、減価償却費によってアパートの会計上の利益がマイナスになることがあります。この場合、損益通算によって給与所得の所得税までも節税することが可能です。
NOIがプラスなのに、実際の支出のない減価償却によって節税できるのであれば、これはとても美味しい話のように思えます。
ところが、忘れていけないのは、借入金の元本返済です。NOIがプラスでも、借入金返済後のキャッシュフローがマイナスであれば、全く意味がありません。
損益通算による節税で喜べる人たちは、基本的には借入金の返済がない人たちです。アパート経営で会計上の利益が赤字になっているような人たちは、ほとんどの場合、借入金返済後のキャッシュフローはマイナスになっています。
元々、アパート経営は、経費率が低いため、赤字になるような収支は、かなり問題のある物件になります。損益通算で節税ができてしまうような物件は、健全なアパート経営とは言い難い状態と言えるのです。

まとめ

以上、アパート経営による節税について見てきました。結果的に生じてしまった節税は仕方ありませんが、節税を目的としたアパート経営は不健全と言えます。赤字経営にならない健全なアパート経営を目指しましょう。