アパート経営で相続の発生前にやるべきことと発生後の注意点について

一昨年の相続税法の改正以来、相続対策のためにアパート経営を始める人たちが増えてきました。
ところが、相続対策がアパートを建てることだけで終わってしまい、いざ相続が発生した場合の対策まで準備ができている人は多くありません。
そこで今回はアパート経営で相続の発生前にやるべきことと発生後の注意点についてご紹介します。

あるアパート経営者の不安

先日、あるアパート経営者のAさんからこんな不安の声を聞きました。
「私が死んだとき、残された家族がアパート経営をできるとは、とても思えない。」
Aさんは、20年近くアパート経営を経験してきており、知識がとても豊富です。
アパート経営では、賃貸借や建物の知識が必要な他、修繕や入居審査等のオーナーの判断能力も必要になります。
Aさんも最初はアパート経営について全くの素人でしたが、一つ一つ勉強し、長い時間をかけて今の知識と判断能力を身につけてきました。
Aさんは、「妻にはアパート経営の知識や判断力がないため、自分がいなくなった後、妻がこんな大変なことをやれるとはとても思えない」と言います。
Aさんの妻や子供たちは、アパート経営にノータッチのため、Aさんのような知識と経験がありません。Aさんは古くなって徐々に難易度が上がるアパート経営を、いきなり知識のない妻や子供たちができるかどうか不安だと言います。

相続前にやるべきこと

実はAさんのような例は結構あります。アパート経営は被相続人が一人で対応しており、相続人は全くタッチで、細かいことを何も知らないというケースです。
相続人からも、親のアパート経営には首を突っ込みにくく、家族の中でもアパート経営に関してはほとんど会話に上らないという家庭も少なくありません。
相続では、知識や経験のない人にいきなりアパート経営を引き継ぐことになりますので、知識の承継が財産の承継と同様にとても大切になります。
相続が発生する前に、「今のアパートの問題点」や「過去の失敗例」等の知識やノウハウを家族で共有し、相続人をアパート経営に徐々に参画させることが「やるべきこと」になります。

相続が発生した場合の注意点

相続が発生した場合、まず賃貸人が変わるということがポイントです。そのため、オーナーと入居者が直接賃貸借契約をしている場合、家賃の振込口座が変わります。入居者に相続が発生したことと、振込口座が変わることを速やかに通知するようにして下さい。
尚、遺産分割協議前は、アパートの所有者は相続人の共有になっています。賃貸人がコロコロと変わると、入居者を混乱させるため、早めに誰がアパートの所有者になるのか決める必要があります。
また、賃貸人が相続人に変わった際、注意すべきは敷金の取扱です。被相続人が預かっていた敷金は、返還義務が相続人に引き継がれています。
被相続人と契約した入居者が退去する場合、当然に、相続人に対して敷金の返還請求が行われます。
ところが、相続人は相続財産を引き継いでいるだけであり、敷金の現金を被相続人から譲り受けているわけではありません。
そのため、相続が開始した直後に、たまたま入居者が退去すると、相続人が敷金を返還することになります。相続人は敷金を実際に預かった当事者ではありませんが、敷金返還義務を負っているため、敷金を返還しなければなりません。
相続開始直後に解約があると、相続人は、自腹で敷金を返還するような感覚になります。よって相続人は事前に現金を十分に確保しておくことが注意点になります。

まとめ

相続の発生前にやるべきことと相続が発生した場合の注意点について見てきました。相続は財産だけではなく、知識やノウハウも承継しておくことが重要です。知識等を承継し、相続人は敷金を返還できる現金を準備しておきましょう。