スマートメーターの怪!空室の電気がストップ

2016年春に始まった電力自由化に伴い、スマートメーターへの切り替えが進んでいます。スマートメーターとは、毎月の検針業務を自動化し、HEMS(Home Energy Management System「ホームエネルギーマネジメントシステム」)などを通じて電気使用状況を「見える化」できる電力量計です。
WEB上で電気の使用状況が確認できるので、省エネ意識が高まり、引越し手続きやアンペアの変更などの立会いが不要になるなど、消費者にはメリットがあります。また、遠隔操作による検針業務の効率化、安全性の向上が、電力会社は期待できます。
省エネ、低炭素を実現するためにも、社会的に重要な取り組みといえます。しかし、大家さんにとっては新たな手続きと出費が生じます。そこで今回は、スマートメーターがアパート経営に与える影響と対策に注目してみます。

退去後の電気、これまでは手間知らず

従来、部屋の電気料金は、「6月30日で退去します」と退去者が連絡をすれば、それまで使用した電気料金は退去者に請求され、「7月15日から利用します」と新たな入居者が連絡をすれば、それ以降の電気料金は、その入居者に請求されるというシンプルなものでした。
空室期間は、ガスと違い元栓が止められるようなことはなく、ブレーカーを上げさえすればいつでも電気が使えました。昼間の内見程度では、電力はほとんど使いません。空室期間は電気料金の負担が大きくないので、退去時の電気関係については何もしない大家さんも少なくありませんでした。

スマートメーターは退去で電気がストップ

建物全体で一括受電契約をしている大規模マンションや、大家が電気料金を徴収している賃貸マンション、アパート以外なら、入居者が電力会社を自由に選べます。入居者が「新電力」会社を選択すると、スマートメーターが設置されることが多いようです。
部屋の外に付いていて円盤がぐるぐる回る従来型の電気メーターが、スマートメーターに交換されると、検針員の見回りは不要になります。どの電力会社で、どのくらい電力を利用したかは、スマートメーターの管理サーバーで分かるのです。新電力はこの情報に基づき、入居者に電気料金を請求します。
新電力を使っていた入居者が退去する場合にネットなどで連絡をすると、退去日までの電気料金が請求されるのはもちろんですが、これまでと違い退去日で電力の供給が止まります。
スマートメーターは、電気供給の開始も停止も簡単に遠隔で行えます。もし仮に6月30日にスマートメーターの部屋から退去すれば、大家が翌日7月1日に部屋に行ってブレーカーを上げても電気はつきません。夜は真っ暗で室内の状況は何も確認できないでしょう。日中でも、給湯器・換気扇・エアコンなどの不具合は確かめられず、原状回復工事で電気工具を使うこともできません。夜間の内見なども対応できないことになります。

スマートメーターの部屋は、退去とともに電力会社に電話

もし大家さんが入居者の退去後、スマートメーターに変更されていると気付いた場合は、どうしたらいいのでしょうか。
その場合は、従来の電力会社に連絡し電力供給の開始を申し込むと、1時間程度で使えるようになります。ただし、日曜や夜間などはオペレータの人数も減るため、電話がなかなかつながらないことが多いようです。月曜日から土曜日までの9時から17時までに連絡することをおすすめします。
また、給湯器の配管が凍結する可能性がある地域では、冬場の退去は注意が必要です。退去と同時に電力を停止してしまうと、凍結防止のために給湯器に通電しておくことができません。そのため配管が破裂してしまうリスクがあります。物件の見回りの際には、各部屋の電気メーターを確認する他、退去時のチェック事項として管理会社に依頼しておくといいかもしれません。
大家さんが電力会社に電力の利用開始を依頼すると、開始日から日割りで基本電気料金が発生します。少しでも費用を抑えるためには、スマートメーターのメリットの一つである「簡単にできるアンペア変更できること」を活用して、最も小さい10アンペアに下げましょう。東京電力の場合、30アンペアの基本料金は月額842.4円ですが、10アンペアなら280.8円です。
新しい入居者は利用開始の連絡の際に、必要なアンペア数を告げればすぐに必要なアンペア数にすることが可能です。ただし、従来のブレーカーのように「10アンペア」などの記載がないため、いきなりブレーカーが落ちないように、「空室中は10アンペアの設定でしたが、必要に応じたアンペア数への変更が、電話1本で可能です」というような案内を入居者にしておくのが望ましいでしょう。
東京電力は、2020年度までに全戸でスマートメーターを設置することを目標に、順次設置を進めています。上述した通り、スマートメーターの部屋は退去とともに電力が止まります。
今後ますます増えるスマートメーターに対応するため、各部屋の状況を把握し、スマートメーターを設置している部屋から入居者が退去する際は、できるだけ事前に連絡をするようにしたいものです。