最強の満室ツール?カーシェアリング

「Anyca」は、2015年9月から始まった自家用車を個人間で貸し借りするカーシェアリングサービスです。サービス開始から2年弱で、全国2,200台以上が登録されています。一般のオーナーが所有する自家用車を、使わない間に他の人に貸し出すというシステムは、まさに自動車版「Airbnb」です。
東京都23区の「Airbnb」登録数は1万6,000件を超えています。モノを所有せず、必要な時に借りて費用や手間を省く、「シェアリング」の考え方が普及してきた一つの証明でしょう。同様に自動車の個人間シェアリングが普及するかどうかは今のところ未知数ですが、家と車の親和性が高いことは確かです。
そこで今回は、国内で利用者が急増している「カーシェアリングサービス」に注目し、賃貸アパート・マンションへのサービス導入について検証します。

増え続けるカーシェアリング人口

カーシェアリングとは、一台の自動車を複数の会員が共同で利用する自動車の新しい利用形態です。当初は仲間同士などで自然発生的に行われていたものが、1980年代後半に欧州で組織的なカーシェアリングが始まりました。1990年代には北米などにも広まり、2012年には欧米を中心に世界27ヵ国で運営され、利用者人口は178万人に達しました。
公益財団交通エコロジー・モビリティ財団による2017年3月の調査によると、日本のカーシェアリング車両ステーション数は1万2,913ヵ所(前年比20%増)、車両台数は2万4,458台(同24%増)、会員数は108万5,922人(同28%増)と、増加を続けています。
なぜ急成長しているのでしょうか。これまで「いつも使うわけではないけれど、必要な時に車を使いたい」という消費者のニーズを満たしていたのはレンタカーでした。そのレンタカーは3時間以上の利用に限られ、営業時間内に店舗で申し込み、保険の手続きをして、ガソリンを満タンにして返す必要があります。
一方カーシェアリングサービスは、15分や30分単位で利用でき、24時間いつでもネットから予約ができるほか、保険も料金に含まれてガソリンの補充もしなくて済みます。コインパーキングの一部などがステーションとなり、シェアリング用の自動車が置かれていて対面の手続きは不要です。月額会費が必要なサービスもありますが、車さえ空いていれば、24時間いつでも車を利用できる手軽さが魅力です。

カーシェアリングが設置されているから入居!?

このような便利なカーシェアリングにも課題はあります。当然ですが、車が空いていないと借りることができません。特に利用者が増える週末は、早めに予約をしておく必要があります。
また、自動車をピックアップするステーションまで遠いと不便です。自分が利用したい車種が、近くのステーションにあることが前提です。
それでは、どこにステーションがあったら便利でしょうか。それは「自宅の駐車場」でしょう。現在、急成長中のカーシェアリングサービスを成長産業と見込んで、レンタカー会社、自動車メーカー、中古車会社、駐車場会社、商社、金融会社などが続々と参入しています。そして、各社が求めているのが、カーシェアリング用の自動車を置くための駐車場です。
カーシェアリングサービスを展開するタイムズ24株式会社が実施した「集合住宅へのカーシェアリング設置が与える影響」に関するアンケート結果によれば、現在居住している集合住宅への入居決定の際、カーシェアリングが設置されていることが「入居の後押しになった」という人が45%もいます。また、現在居住している集合住宅にカーシェアリングが設置されていることで、80%が「物件満足度の向上に影響した」と回答しました。
そもそもカーシェアリングサービスの会員を対象とする調査なので、数字を鵜呑みにはできません。しかし、回答者1万7,673人の中で、カーシェアリングが設置されている集合住宅に住む人は15%に過ぎません。つまり、85%の集合住宅には、大いなる可能性があるとも言えるのです。
賃貸住宅に導入する際は、駐車場にカーシェアリング用の車を置き、入居者が会員になれる特典を付けることも可能です。大家さんが駐車場を無料で提供する代わりに、売上をシェアするという共同事業方式や、カーシェアリング会社が、大家さんから駐車場を単純に借り上げるケースもあります。
清算やトラブル対応もすべて対応してくれるので、駐車場一台分さえあれば、初期費用と労力なしの導入が可能です。しかし、そもそも賃貸物件の既存入居者や顧客候補がサービスを使う可能性はどうでしょうか。駐車場一台を月極で貸す場合と、どちらが総合的に利を得られるかは、冷静な判断が必要です。
都心部を中心に増え続けるカーシェアリングサービスは、賃貸住宅を選ぶ決め手になり、入居者の満足度を向上させる可能性があります。賃貸アパート・マンションそれぞれの立地や住人の属性を考慮しながら、空室対策の一つとして検討してみる価値はありそうです。