政府による国・自治体の不動産データベース統合

現在、国や自治体が保有する不動産に関するデータは、主に法務省の不動産登記データ、国土交通省の土地総合情報システム、自治体の固定資産課税帳、農地台帳、林地台帳などがあります。また、不動産会社も独自の情報を持っています。
政府は2018年夏から、このような不動産のデータベースを統合する実証実験を、一部の都市で実施することを発表しました。そこで今回は、現状の問題点や不動産データベース統合によるメリットについて解説します。

不動産データベース統合によるメリット

● 空き家対策がしやすくなる

2013年の総務省の調査によれば、全国の空き家の数は約820万戸で、全体の13.5%を占めています。また、2017年6月に発表された野村総合研究所の調査によれば、2033年には空き家の数は2,166万戸、全体の30.4%を占めると予測されています。
さらに今では、管理されていない空き家が増加しています。老朽化による景観の悪化、家屋倒壊、不審者が出入りするなど、治安悪化の危険性が以前から問題視されていました。
2015年の空き家対策特別措置法により、対処が必要な空き家を、自治体が「特定空家」と指定し、助言・指導、改善勧告や命令、従わない場合には強制対処が行えるようになりました。
東京都世田谷区や葛飾区、品川区などでは、所在者不明の空き家を取り壊すという事例も出てきています。このような法律の制定や自治体の取り組みなどにより、周辺に悪影響を及ぼす可能性のある空き家への対策は、少しずつ進んでいます。
国土交通省の調査によれば、空き家などの対策を計画、もしくは計画予定がある自治体は、現時点で全国の半数程度ということです。そして、空き家対策に取り組みたいと考える自治体は多いものの、現実的には空き家の所有者が特定できないと具体的な対策が取れないという問題もあります。
上述の通り、不動産データベースが統合されれば、空き家を有効活用するための具体的な対策が立てやすくなるでしょう。

● 空き地対策がしやすくなる

法務省が全国の約10万筆の土地を対象にした調査によると、最後に所有権の登記がされてから50年以上経過しているものが大都市地域で6.6%,中小都市・中山間地域では実に26.6%にのぼることが分かりました。
その中には、過去50年の間に、相続などで所有者が変更したという土地もあるでしょう。しかし実際は「相続した時に登記を忘れている」「相続したものの、諸事情により放置している」などの理由で、名義が変更されていないケースが少なくないようです。農林水産省の調査では、国内の農地の約2割は相続時に名義変更がされず、故人のままである可能性が高いとされています。
所有者不明の空き地が増えたり、空き地の管理が適切に行われなかったりする状況は、地域開発を妨げてしまうだけでなく、環境の悪化や、震災などの災害時に、土地収用などを実施する上でも阻害要因にもなります。
一方で、例えば通常の登記の変更がされていなくても、土地の一部が農地であれば、自治体が保有する農地台帳に所有者が記載されていることもあります。データベース統合により、実際の土地の所有者はより把握しやすくなるでしょう。

「空き家・空き地バンク」の充実化

すでに、自治体が空き家・空き地の情報を集め、利用希望者に対して情報を提供する「空き家・空き地バンク」という制度が実施されています。ところが、自治体ごとに情報がバラバラのため、利用者が検索しにくいという問題点がありました。
2017年6月、不動産情報サイトを運営する大手不動産会社が、国土交通省のモデル事業として「全国版空き家バンク」情報サイトの事業者に選ばれました。
自治体登録を受け付け、2017年秋からはβ版のサイトの運用が始まります。データベース統合で「空き家・空き地バンク」が充実化すれば、利用者も活用しやすくなるでしょう。

民間の新たな不動産サービスにつながる

政府は、今回の不動産データベース統合において、一部の情報を民間に公開するとしています。これまでの不動産業界では、利用者が詳細な情報まで得ることが難しく、不透明なまま取引が行われているという点を指摘する声もありました。
近年では、不動産業者と利用者の情報格差を是正し、効率的に不動産取引を行うことができるIT技術を利用した「不動産テック」のサービスなども続々と登場しています。
これまで国や自治体が保有していた不動産情報が公開され、活用しやすくなることで、不動産取引をより効率的に行う新サービスなどの登場も期待できます。
今回は不動産データベース統合がもたらすメリットを、私たちと関わりが深いであろうものからいくつか紹介しました。これ以外にも、「都市開発等にかかる地権者との調整」や「固定資産税などの徴税に関する情報確認」への活用も期待されています。政府は今後5年をかけて、実証実験を続けながら全国展開したいと考えているようです。
今後もいろいろと障壁はあるでしょう。しかし、今回の取り組みがうまくいけば、プラスの効果は高くなるはずです。今後の動向が大きな注目を集めています。