リノベ団地に学ぶ、古さを活かしたリフォーム

1951年制定の「公営住宅法」に基づき、住宅に困窮する低所得者や高齢者が安い家賃で暮らせるよう、賃貸県営住宅や市営住宅などが建てられました。
一方、1955年から日本住宅公団(現在のUR都市機構)は、当時最先端のダイニングキッチン、水洗トイレ、ベランダなどを取り入れた賃貸住宅を建築しました。入居には年収の下限が設けられ、庶民の憧れの的となったのがいわゆる「団地」です。
月日は流れ、古くなった団地ではその老朽化とともに、住民の高齢化と空室が大きな問題となっています。今、建て替えが進められない団地の一部では、民間事業者と協力したリノベーションが行われています。
今回は、「古さを活かした」リフォームを、リノベ団地の企画から学んでみましょう。

古き良き佇まい+現代の水回り+色

2015年度グッドデザイン賞に輝いた、UR賃貸住宅[暮粋(くら・しっく)]は、リノベーション範囲を小さくとどめて費用と家賃の上昇を抑えながら、もとの公団住宅が持っていた独特の質感を継承するデザインになっている点などが評価されました。
団地らしさを活かすために「残したもの」は、畳、昭和40年代の“ぽっこり丸い”台所照明、ノスタルジックな雰囲気が漂う型板ガラス、素朴かつ頑強な木製建具の取っ手などです。これらが「懐かしさ」を醸し出し、部屋に温もりを与えています。
「新しくしたもの」は、シンプルなブロックキッチン、シングルレバーの水栓、洗面鏡付きの洗面台、室内洗濯機置き場。水回りは、現代に求められる機能性を提供しています。
最大のコンセプトである「色が暮らしを粋にする」は、お金をかけずに、部屋をより良く見せる王道です。床やふすま・壁の木枠に、アクセントカラーを用いたデザインは、現代にも通用するクラシカルな上品さを感じさせます。3種類のカラーバリエーションは、小豆・藍白(あいじろ)・萌黄(もえぎ)です。
小豆はアンティーク家具とも相性がいいほっこりした雰囲気、藍白はシックな家具とも相性がいいクールな空間、萌黄は観葉植物や木製家具がぴったりなナチュラルな演出です。どれも古びた団地のイメージを払拭したスタイリッシュな部屋となっています。

原状回復できる範囲でのプチリノベ

JKK東京(東京都住宅供給公社)は、DIYクリエイターによる、原状回復が可能な「プチリノベ」を施した何種類もの部屋を発表しました。同じようにプチリノベした部屋を複数提供するわけではなく、あくまでもアイデアの紹介が主目的です。
たとえば、小さな子どもがいる夫婦という家族構成を想定した2LDKは、「アメリカ西海岸の爽やかな夏」がコンセプトで、ブルーとホワイトが効果的に使われています。
また、ウッドウォールと収納に利用した壁面が特徴的です。リビングのウッドウォールは白と青のボーダーで、子どもが喜びそうな手作りのピタゴラ装置や黒板ボードが設置されています。このウッドウォールは、「ディアウォール」という付属のパッドと2×4材を使用して、クギやビスを使わずに好きなところに棚をDIYできる製品で作られています。
反対側の壁は一面にオープンタイプのラックを設置してあり、圧迫感なく収納の充実をはかっています。また、ラックの棚を一枚有孔ボードにした机もあります。
ダイニングの壁もディアウォールを使った有孔ボードが設置されていて、ちょっとした棚の他に、自由な飾りつけが楽しめます。キッチンの戸棚は、貼ったり剥がしたりできる黒い壁紙を使うことで、すっかり印象が変わりました。この黒板シートは、家族の伝言やレシピが書けます。
上記の例のみならず、各部屋では量販店で販売されているお手頃な商品が使われています。製品名や価格が掲載されているので、プチリノベを考える際に、非常に参考になります。ちなみに、上記の例では、部屋に飾られた小物を含めて、24万553円(税別)でした。
老朽化した住戸を多く抱える団地の中には、デザイナーやクリエイターの力を借りてリノベーションすることで、住空間に新たな魅力を持たせているものがあります。今回紹介したような「古さを活かす」手法や、色の使い方を参考にすれば、通常のリフォーム費用でもより素敵な住空間が実現できるかもしれません。