冬を前に要チェック 住まいとヒートショック

ヒートショックとは、急激な温度変化により血圧が大きく変動することなどが原因で起こる健康被害のことです。冬のお風呂場で起こりやすい事故なのですが、循環器系の働きが弱くなっている高齢者は特に注意が必要です。
本格的に寒くなる前に、事故防ぐためにどんなことに気を付ければいいのか、対策を考えてみましょう。

危険! 死亡者数は交通事故以上

ヒートショックで死亡する高齢者は多く、年間1万7000人とする研究発表もあるほどです(東京都健康長寿医療センター推計・2011年の死亡者数)。同年の交通事故による死亡者数は4611人なので、およそ4倍にもあたります。
また近年その数字は増加傾向にあります。厚生労働省の人口動態統計によると家庭における浴槽での溺死者数は、2014年には4,866 人を数えており、2004年に比べ10 年間で約 1.7 倍にも増増加しています。浴槽で溺死する原因のほとんどはヒートショックとみられます。
近年、注意が呼びかけられている熱中症による死亡者数は65歳以上の高齢者に限ると、年間492人(2016年)なので、ヒートショックの危険性がうかがえます。
危険性が非常に高いにもかかわらず、消費者庁が行ったアンケート調査によると、36%の人が「冬の寒い日でも浴室や脱衣所の防寒を何も行っていない」と回答しています。入浴中の事故死は、冬季に集中しており、12 月から2月にかけて全体の約5割が発生しているので、まさにこれからの季節こそ、対策がもっとも求められるシーズンです。

家の中での「寒い」に要注意

ヒートショックのリスクを判断する重要な基準は家の中で「寒い」と感じることがあるかどうかです。2014年にインターネット上で行われたアンケート調査(暖差リスク予防委員会)によると、「冬の家の暖かさについて満足しているか」という問いに対して、約半数の46.2%が「不満」もしくは「やや不満」と答えています。
不満の中でもっとも多いのが「廊下や脱衣所・浴室が寒い(62.4%)」で、住まいでもっとも寒いと感じる場所は「洗面室・脱衣室(57.8%)、次いで「浴室(51.4%)」「トイレ(50.2%)」「廊下(43.5%)」です。
またそういった温度差のある場所へ移動した際に、なんらかの身体の反応や変化、影響を感じたことがあると答えた人が8割近くにのぼっています。ところが、「暖房等で暖めるのはリビングなどの居る部屋のみで、その他の場所は暖めない(60.5%)」「自宅の脱衣室や浴室が寒くても暖房器具を設置していない(37.8%)」と消極的な対応にとどまるケースが多いようです。

安全な入浴法を要確認

ヒートショックは身体が温度差を強く感じることで起きるので、体感の温度差を和らげることが有効な対策です。夏に比べて冬は浴室の気温が低い反面、「寒いから暖まりたい」というニーズが強いのでお風呂の温度は高めです。そのため入浴することで身体は大きな温度差にさらされるのです。
いきなり熱いお湯に入ると、交感神経が刺激されるため血圧は上昇しますが、身体が暖まって血管が拡張すると、今度は急落します。この乱高下が原因で脳や心臓の血管障害が発生したり、意識障害を起こしたりしてお風呂で溺れるケースが少なくありません。
冬場に入浴するときには浴室を暖める工夫が有効です。具体的には湯温40度設定で浴槽にお湯を貯め、入浴直前に43℃のシャワーで3分間お湯を入れるというのがあります。シャワーヘッドを高い位置に掲げてお湯を入れることで、浴室全体に湯気が立ちこめるため、「寒い」と感じるのを防ぐことができます。
住宅設備としては浴室暖房乾燥機の導入が有効です。後付けや簡易型もあるので、最近ではかなりリーズナブルな価格で取り付けられます。「DIYでなんとか」という方には浴室の窓に断熱シートを貼るのもおすすめです。

意外? トイレでも起きるヒートショック

浴室に次いでヒートショックが起きやすいのがトイレです。日本の住まいは北側にトイレを設けるケースが多く、冬場は特に寒くなりがちです。掃除しやすいようタイル張りにしているとさらに寒さを感じます。
高齢者は寒さが厳しい夜間に何度もトイレに行くことが多く、それだけヒートショックのリスクが高まります。対策としてはできるだけトイレに近い部屋で就寝したり、トイレに暖房機器を設置したりすることを考えてみるのがよいでしょう。
最近ではトイレ用の小型暖房機や暖房一体型の天井照明などがある他、洗浄機能付き便座にも室内暖房機能が付いたものが登場しています。

まとめ

ヒートショックは高齢者だけでなく、高血圧・糖尿病・動脈硬化の病気をもっている人や肥満気味の人、睡眠時無呼吸症候群など呼吸器官に問題がある人なども特に気を付けなければなりません。部屋間の温度差を無くすことでリスクを大幅に減らせるので、まずは家の中の寒い場所をできるだけ無くしていくことから始めるのがよさそうです。