物件売却の税金 勘違いベスト3「売り時」を逃す!?

あらゆる投資の目的は、利益=ゲインを得ることです。ゲインには、「売却益=キャピタルゲイン」と「保有益(利子・家賃など)=インカムゲイン」があります。80年代のバブル景気とその崩壊は、日本の不動産投資の主軸を、キャピタルゲインからインカムゲインにシフトさせました。リスクの違いこそあるものの、両者のどちらが正しくて、どちらが間違っているということではありません。なぜなら、あらゆる投資の目的は利益を得ることにあるからです。
不動産投資では、保有期間中のインカムゲインと、売却時のキャピタルゲインの合計で、その投資の収支が確定します。保有期間中に多くのインカムゲインを得ていても、物件売却時のキャピタルゲインが大きなマイナスとなっては、いい投資とはいえません。損をしない売却をするためには、売り時の考え方と同時に、売却益にかかる税金の正しい知識が必要です。そこで今回は、不動産売却時に生じる税金の「勘違いベスト3」に注目してみました。

不動産売却時の税金とは

不動産売却で生じる所得を「譲渡所得」といいます。そして、譲渡所得から特別控除を引いた金額が「課税譲渡所得」で、これを基準に譲渡税は課税されます。マイホームの場合は特別控除として「居住用の3,000万円特別控除の特例等」がありますが、残念ながら投資物件にはありません。そもそも譲渡所得がマイナスであれば課税されません。
・ 譲渡所得 = 譲渡収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)
・ 課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 特別控除
・ 譲渡税 = 課税譲渡所得 × 税率(所得税・住民税)

● 勘違い1. 「1億円で買った物件を8,000万円で売れば税金はかからない」

譲渡所得の計算に必要な「取得費」を、「購入金額」と勘違いする大家さんは大勢います。残念ながら、そうではありません。取得費は、土地・建物の購入代金と、取得に要した費用を合計した金額から、建物の減価償却費を差し引いた金額で計算されます(実額法)。
例えば、諸経費込み1億円で購入した収益不動産が、売却までに減価償却費を累計3,000万円計上した場合、取得費は7,000万円ということになります。減価償却費は、実際には支払わずに、費用計上できるため、不動産投資のキャッシュフローに大きく寄与します。しかし、費用計上してきた減価償却費が、取得費の金額を下げて、売却時の税金を重くするのです。なお、先祖代々の土地など、取得費が明確でない場合は、譲渡収入金額の5%にできる(概算法)ほか、実際額と概算法のいずれか高い方を選択することができます。
取得費と同様に、譲渡所得の計算で収入金額から差し引ける「譲渡費用」とは、土地や建物を売るために直接かかった費用です。一般的には、土地や建物を売るために支払った仲介手数料と、売主が負担した印紙税になります。借家人に家屋を明け渡してもらうための立退料や、更地にするための建物取壊料が生じた場合は、それも計上できます。一方、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用や、売った代金の取立てのための費用などは譲渡費用になりません。

● 勘違い2. 「譲渡所得はサラリーマン所得や不動産所得と合算される」

譲渡税は、譲渡所得以外の所得と合わせて課税されるわけではありません。譲渡益に対する税率は、他の所得と分離され、分離課税の税率が適用されます。
例えば、サラリーマンの給与所得500万円+不動産所得380万円の計880万円の所得がある大家さんに譲渡所得1,000万円が生じた場合は、880万円に対する所得税(~23%適用)と1,000万円に対する譲渡税(39.63%または20.315%)の合計額が課税されます。所得が増えれば増えるほど税率が重くなる「累進課税」を念頭に、「退職までは売却しない」と考えていたサラリーマン大家さんは、誤解を解くようにしてください。

● 勘違い3. 「10年経てば税金が安くなる」

「物件の所有期間が10年を超えると税率は下がる」と勘違いしている大家さんも少なくありません。所有期間で税率が変わるのは正しいのですが、10年超の場合は用途で税率が異なります。
まず、用途にかかわらず、所有期間が5年以下なら短期譲渡所得(所得税・住民税39.63%)、5年を超えれば長期譲渡所得(所得税・住民税20.315%)です。そして、居住用のみ「10年超所有軽減税率の特例」として、課税譲渡所得6,000万円以下の部分が所得税・住民税14.21%に下がるのです。
また、所有期間の考え方で勘違いしている人が多くいるようです。所有期間が5年以下か、5年超かは、譲渡した年の1月1日で判断します。例えば、「2012年9月に購入した物件を2017年10月に売却すれば、丸5年が経過しているので『長期譲渡所得』だ」と思っている大家さんは、損をします。正しくは、2018年1月1日以降に売却した場合に「長期譲渡所得」となるのです。なお、所有期間が10年を超え、「事業用の資産を買い換えたときの特例」に該当する場合は、譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べられます。

きちんと理解して物件と向き合おう

不動産投資は、物件の購入に始まり、長期にわたってインカムゲインを獲得し、売却によるキャピタルゲインなどが期待できる投資です。そのため、インカムゲインを重要視する大家さんも、売却に関する正しい知識は必要です。
上記の3点を常に念頭に、アパート経営と向き合うことが求められているのではないでしょうか。