ヤマダ電機が不動産事業に乗り出した狙いは?

大手家電量販店のヤマダ電機は2017年7月、不動産仲介事業に乗り出すことを発表しました。
「家電」と「不動産」というこの2つを、ヤマダ電機はどのように関連させ、シナジー効果を生んでいくのでしょうか。

ヤマダはこれまでも不動産関係に力を入れてきた

ヤマダ電機は、これまでも不動産関係事業に力を入れてきました。都心の大型店では、リフォーム関連事業の展示ブースを設け、家のリフォームと大型家電の入れ替えなどを顧客に提案してきました。これは、ヤマダ電機が関連子会社を設立し、取り組んできた事業です。ヤマダ電機以外にも、郊外型大手家電販売チェーンのエディオンなどが取り組んでいます。
二世帯型住宅への改築、家のリフォームやリノベーションは、大型家電を販売する絶好の機会です。さらにソーラーパネルの設置などをする人も多いので、ヤマダ電機としては単価の高い顧客を狙うチャンスといえます。リフォームなどの不動産関連事業に乗り出す狙いは、非常に分かりやすいものといえるでしょう。
そして、2017年の4月からは、関連子会社を設立して金融事業にも進出しています。多額の費用がかかるリフォームのための「リフォームローン」の融資から、住宅を購入する人への融資も行っています。ヤマダ電機が不動産仲介業に乗り出すことは、この段階から明らかだったといえます。着々と実績を積み上げてきたヤマダ電機にしてみれば、不動産仲介事業の可能性に関しては、確固たる手応えがあったのかもしれません。

不動産仲介で、顧客を一生涯囲い込む

不動産仲介事業に乗り出すことで、ヤマダ電機は具体的にどのようなビジネスモデルを想定しているのでしょうか。不動産仲介業者は、仲介手数料として賃貸の場合は1ヵ月分の家賃、販売した場合は通常販売価格の3%+6万円を受け取ります。これが不動産仲介業者の収入源となりますが、ヤマダ電機はこの仲介手数料の一部を「ヤマダポイント」を付与する形態で、入居者または購入者にキャッシュバックします。ポイントをもらった顧客は、そのポイントを利用して必要になる家電や家具などを、ヤマダ電機で購入するでしょう。不動産の仲介手数料を得るだけでなく、自社店舗の売上アップにつながるシステムを構築したのです。
また、住宅を購入した顧客の年齢、家族構成、世帯収入などの情報は、ヤマダグループのデータベースに蓄積されます。これを利用して、家族のライフサイクルに合わせてタイミング良くセールスのメールを送り、適切な提案やセールスが仕掛けやすくなります。住宅ローンもヤマダ電機の関連子会社で組んでもらえれば、その金利や手数料もグループの大きな収入になります。
住宅とは、人間の一生の暮らしに関わるものです。住宅を通じてヤマダ電機と一生お付き合いする関係を作ってもらうことで、顧客の囲い込みを狙っていると思われます。景気が回復してきているといっても、消費者心理の回復には遠く及ばず、消費は伸び悩んでいるのが現状です。家電の小売だけでは、売上を伸ばすのが難しくなっているのです。ヤマダ電機は不動産と金融の両方に乗り出し、その2つの売上だけではなく、同時に家電の売上も伸ばせると見込んでいるのでしょう。

不動産投資家へのメリットは?

不動産投資家としてヤマダ電機を利用するメリットは、やはり、ヤマダポイントが設備投資に回せる点です。老朽化した物件の修理の際、ヤマダ電機に依頼すれば、購入価格に応じてポイントが付与されます。そのポイントを使って、エアコンなどを購入すれば、費用をかけずに設備を充実させられることになります。
こうした直接的なメリットだけでなく、インターホンや防犯カメラなど、ニーズの高い設備をまとめて購入すれば、スケールメリットを活かした割引交渉もしやすくなりそうです。また、ヤマダ電機に一括で依頼すれば、いろいろな手間も省けます。もちろん、いくらポイントが得だからといっても、設備投資のコストダウン自体ができていなければ、利用する意味はありません。しかし、厳しいディスカウント競争が当たり前の家電業界で生き残ってきたヤマダ電機だけに、コストパフォーマンスの点では、大きな期待ができるのではないでしょうか。
ヤマダ電機は今、包括的な不動産事業への進出で、新しい価値の提案やビジネスの創出を図っています。今後、家電業界からヤマダ電機に続く企業が出てくる可能性もありますし、既存の不動産会社が、家電量販店とタッグを組むことも考えられます。不動産投資家としては、修繕費や設備投資を削減し、利回りを高めるためにも、このような異業種からの参入企業に注目する必要があるでしょう。