会社員のための不動産投資ストーリー 第3話

この物語は、不動産投資を通じて本気で人や仕事と向き合うことの大切さを知ることができた主人公の心の成長ストーリーを描いたものです。
(※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。)
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5.伝説

麻布は本田の顔を一瞬真顔で見つめる。
「ガハハハッ、そりゃ面白い。友人を救うために不動産投資の方法を知りたい奴なんて初めて聞いたぞ。」
麻布は急に笑い出し、場が一気に和やかになった。
「良かろう、ただワシは特別なことはしとらんよ。『人の行く裏に道あり花の山』、ただそれだけじゃ。」
その格言は本田も知っていた。人と違ったやり方にこそ金脈があるといった類の意味だ。
「その言葉は知っています。では具体的にどのような投資をしているのですか?」
麻布の理論は単純明快だった。
要は、不動産投資は物件購入のタイミングが重要であること。安いときに購入し、高いときに売るという話であった。
但し、安いときは、誰しも不動産は儲からないと思っている。このタイミングで不動産を買うやつはバカだと思われる。
こういう時期は銀行もお金を貸してくれない。そこで威力を発揮するのが自己資金だ。不況のときは自己資金を持っている奴が一番強い。
好況のときに売却して自己資金を貯めておく。不況で誰も不動産を買えないときに、自己資金で不動産を安く買いたたく。
「わしのやっていることは、ただそれだけじゃよ。」
麻布は不動産業界では有名人であるが、不動産市況が高騰しているときは、一切市場に姿を現さない。不景気になると突然現れ、現金で不動産をかっさらって行くという。
バブル崩壊後とリーマンショック後の2度の不景気に登場し、大型物件を買い漁ったことから「伝説の不動産投資家」という異名がついた。
「今は低金利時代で誰もが金を借りやすいじゃろ。そこの裏道を行かなあかん。けど、それが出来んのが人間じゃ。本田君、あんたに人の裏道を行く覚悟があるかの~?」
本田は答えられず、作り笑いをするのが精いっぱいであった。最後は麻布に礼を言ってクラブLを出た。
「義兄さん、すごいですよ。初対面であの爺さんに気に入られるなんてびっくりだ!」
本田は、麻布の話は理解できたものの、あまりにシンプル過ぎて、正直、満足感は得られなかった。

6.論争


数日後、意外な人物から連絡が入った。曽我の妻である良子からだ。曽我が投資物件を購入するので一緒に見て欲しいという。
どうやら、曽我は不動産投資のことを誰にも口外していないらしい。他人に不動産投資をすることを伝えたのは本田が初めてだったため、「本田さんの意見なら聞くと思う」というのが良子の話だった。
本田は、曽我に「自分も不動産投資に興味があるから、物件を見に行くような機会があれば勉強のため一緒に連れて行って欲しい」と申し出た。
曽我は、本田も不動産投資に興味をもってくれたことに喜びを感じ、快諾した。
物件は埼玉県郊外にある木造の築30年のアパートだ。本田は聞いた瞬間、駄目だと思ったが、それは口にしなかった。
曽我と本田は八丁堀で待ち合わせを行い、「東部動物公園駅」へ向かった。電車で約1時間弱だったが、2人は昔話に盛り上がり、あっという間に現地に着いた。
物件は、10戸中6戸が入居中、4戸が空室の物件だ。空室はここ2年間ずっと空室のままだと言う。
曽我は、この物件を利回り15%で買ってリフォームすれば化けると興奮気味に語った。一方、本田は立会いの不動産屋にネガティブな質問を重ね、欠点の洗い出しにかかった。
そしてあろうことか、不動産屋から「お客さんたちがそこまで気にするのであれば購入は止めた方が良いかもしれませんね」という意見を引き出してしまったのだ。
さすがに曽我も本田に対して憤慨した、
「お前、いったい何しに来たんだ!物件を買うのを反対に来やがったのか!!不動産の知識もないくせに偉そうなこと言うな!」曽我は熱くなり、先に帰ってしまった。
残された本田は、不動産屋に非礼を詫び、しばらく呆然としていた。そして本田は行きとは比べ物にならないくらいの時間を感じながら、一人で東京へ向かうのであった。


※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。