新たなトレンド「保育所併設マンション」

政府が女性活用の促進をうたい、働く女性が増える中、子育て世帯にとって深刻な問題となっているのが、定員オーバーで保育所には入れない待機児童の増加です。国内では施設が足りないエリアが多く、女性の社会参加を妨げる大きな要因になっています。
そういった事情を受け、マンションなどの集合住宅に保育施設を併設するケースが増えています。
待機児童問題は子育て世帯の大きな悩み
働く女性が増えていることにより、保育施設には入れない「待機児童」が増えています。厚生労働省の発表によると、2017年4月1日時点で待機児童数は26,081人で、前年比2,528人の増加が見られました。
2014年以降、増加傾向が続いている中、地域による偏りも大きく、働く女性の数に比べて施設が不足している大都市部ほど問題は深刻です。
政府では2020年度末までに待機児童をゼロにすることを目指しており、受け皿となる保育施設を充実させるため、さまざまな施策を進めています。

容積率緩和特例マンションに国が要請

施策の一つとして出されたのが、大規模マンションにおける保育園の設置促進を周知する通達です。2017年6月に発布されたこの通達では、大規模マンションにおける保育施設確保のモデル事例が示されたほか、地域のニーズに応えられるだけの保育施設を確保するよう、地方自治体に対して要請が行われました。
さらに10月には、厚生労働省と国土交通省が共同で大規模マンションにおける保育施設の設置を促進する通知が出されました。通知の対象となったのは容積率緩和の特例を利用して建て替える大規模マンションです。
特例を利用して建て替えた場合、世帯数が増えるため、地域の児童数が大幅に増えることが考えられます。その結果、新たな保育施設が必要になると見込まれる場合には、地方公共団体から開発事業者に対し、保育施設の設置を要請するよう、通知では求められています。

賃貸でも「保育所で差別化」の動き

集合住宅に保育施設を併設する動きは賃貸住宅でも見られます。(株)大京が企画・提案した賃貸マンション「ライオンズフォーシア蔵前」(東京都台東区)では、小規模認可保育所が4月に導入される予定です。
同様の物件はこのほかにも見られます。2016年3月に竣工した「京王アンフィール国領」は敷地内に認可保育所を併設しています。京王電鉄の関連会社がマンションと保育所を運営しています。
同物件は間取りや設備にも子育て世帯への配慮を盛り込んでいるほか、帰宅を知らせるメールサービスや、入居者専用のコミュニケーションスペースを設けるなど、子供を持つ世帯のニーズに応えるさまざまな工夫が設けられています。

継続的な運営にはハードルも

保育施設併設は分譲・賃貸物件いずれにおいても魅力だが、注意点もあります。まず、認可保育園の場合には地域住民にも利用する権利があり、マンションの住人が優先的に利用できるわけではありません。
抽選等に外れれば、マンションの住人であっても、マンション内に設置されている保育施設を利用できないかもしれません。
保育施設の運用費負担が問題になることも考えられます。物件ができた当初はデベロッパーや関連会社が運営を負担しているケースがしばしば見られますが、後に運営費が住人負担に切り替えられる可能性もあります。
運営費の問題や保育士の人員不足などから、運営が難しくなることがあるため、継続的に利用できるかどうか見極めることが大切です。
保育施設の併設は入居者にとって大きな魅力です。ニーズの大きな施設だけに、分譲・賃貸物件において、今後も増えていくことが予想されます。ただし、優先的に入所できないなど、思わぬ問題が発生するケースもあるので、提供する側も入居する側も、事情をよく確認することが欠かせません。