「今が売り時」は本当?不動産を売った人しかわからない売却の苦悩

昨今の不動産価格の高騰から、不動産業者から売却を勧められる人もいるかもしれません。しかし、不動産を「今」売却することは正しいのでしょうか?今回は、実際に情勢に流されて売却した人が負うリスクと売却するタイミングについて考えます。

不動産投資家を取り巻く環境

金融情勢の緩和などを背景に、不動産価格は上昇傾向にあります。中古物件が高騰する中で、新築物件との収益格差が縮小し、今後ますます新築物件が増加すると予想されます。一方で、人口減少により賃貸物件は完全に供給過多となり、中長期的には再び不動産価格が下降していくおそれもあります。そんな中、「不動産価格が高いうちに物件を売って利益を確定させるべき」と考える人もいるかもしれません。
不動産業者の立場からすれば、価格高騰によって買い物件を紹介するのが難しいので、売却する方向で案内する人もいます。中には不動産物件の売却資金を使って別の物件購入を提案する人もいることでしょう。本当に不動産投資家のことを思っての提案であればよいのですが、仲介手数料目的の提案だとすれば、不動産投資家は売却タイミングなのかどうかをよく検討すべきなのです。

「売り急いだ」不動産投資家たちの未来は?

そうした情勢に流されて物件を売却してしまった不動産投資家には、どのような未来が待っているのでしょうか?

1.売却時におけるストレス

まず、売却時のストレスが考えられます。そもそも周りに流されて売却をしようと決めたため、早く売れすぎれば「売価を間違ってしまったのでは?」と思い悩みます。また、計画もなく、ただ高く売却することしか考えていなければ、買主のローン条項の成否に一喜一憂し、購入時以上の時間と労力、大きな心理的負担がのしかかります。なぜなら、毎月不動産からは家賃収入を得るだけだったのに、売却すれば一度に多額の売却金が入ってくるからです。気持ちが踊ってしまうのは致し方ないことなのかもしれません。

2.よい物件から売れることによる収益悪化

「商品はよいものから売れる」というのは商売の原則です。これは不動産も同じで、満室稼働、良立地、高利回りの物件から売れていくことが多いです。したがって計画性を持たず、やみくもに売り出せば、手持ち物件は悪いものだけが残り、月々の収益は売却前から大幅に減少します。悪い物件は想定した売値で買い手がつかず、不動産業者から値下げを打診されても、もともと高値で売ることが目的だったので申し出に応じられず、結果的に悪い物件が手元に残ってしまうのです。

3.小さなリフォームを先送りにして良物件が悪物件に

不動産の売却はリアルタイムで進行します。「もしかしたら、来月には買い手が付くかもしれない」と考える物件でリフォームを施そうという発想はなかなか生まれません。結果的に必要なリフォームを次々と先送りにして売り出した物件は、年を追うごとに劣化します。当初は良物件だったものが悪物件になることもあるのです。

不動産投資家が考えるべき本当の物件売却のタイミングとは?

1.所有物件がデッドクロスになる前

不動産をローンで購入した場合、不動産の減価償却額をローンの元金返済額が上回る、「デッドクロス」と呼ばれる状態に陥ることがあります。ローンを元利均等返済で借りると、借入年数に伴って利息割合が減少し、元金割合が増加していくため、どこかの段階で元金返済が減価償却費を上回ります。そうなると、キャッシュがないにもかかわらず帳簿上は黒字となり、それにより所得税が大きくなり、マイナスに陥るのです。所有物件がデッドクロスになる前に売却すれば、これを防げることができます。デッドクロスになる時期は購入段階から計算できるので、売却時期についてはじっくりと検討することができます。

2.大きなキャッシュアウト前もタイミングの一つ

売り出し物件では小さなリフォームでも放置しがちになり、物件を悪化させる原因になることはすでにお伝えしました。たとえば、外壁塗装のような大規模修繕のタイミングは、購入時からある程度予想ができます。大規模修繕のような大きなキャッシュアウトの前も、売却するタイミングの一つでしょう。

売却計画を立ててから不動産投資を行うこと

一般の不動産投資家にとって、市況を読んで不動産売買をすることは簡単ではありません。不動産業者は売買のプロであり、市況を読みさまざまな提案で売却を勧めてくるでしょう。しかし、売却するつもりがなかった物件を周囲に流されて売却すると、不動産投資全体の収益性悪化に繋がりかねません。また、想定した金額での売却ができなかったり、リフォームを先送りして物件の状態を悪化させる要因になるおそれもあります。不動産の購入前からある程度の売却計画を立て、家賃収入でキャッシュフローを殖やしてから売却を検討しましょう。