不動産投資に失敗する人が甘く見ているもの。それは自己資本比率

「自己資金ゼロ(フルローン)でもできる不動産投資」などの広告を見ると、フルローンについて興味を持つ人もいるのではないでしょうか。ただ、実際に不動産大家になるということは、不動産経営をするわけですから、投資をする前に資産と負債についてよく検討する必要があります。そこで、今回は不動産投資における自己資本比率について考えてみましょう。

自己資本比率と自己資本比率の計算方法

「自己資本比率」とは財務分析や株式投資で登場する専門用語です。株式会社では広く投資家から資金を調達し、事業を行うのに必要な従業員を雇用し、土地や設備などを調達して、製品やサービスを提供します。
集めた資金と調達した資産(土地や設備など)の内訳を明らかにしたものが貸借対照表です。貸借対照表の左側が借方(資産)、右側が貸方(負債と純資本)です。負債と純資本を足したものを総資本と呼びます。
負債とは「返す必要のあるお金」です。一方、純資本は「返す必要のないお金」です。企業の資金は、この2種類のいずれかに分類されます。
企業の安定性を測る指標である自己資本比率は、返す必要のないお金である「純資本」と、集めた全体の資金である「総資本」の比率で、以下の計算式で示されます。
自己資本比率(%)=(純資本)/(総資本)×100
実は不動産投資においても、自己資本比率の考え方を適用できます。投資総額が「総資本」、金融機関からの借入金が「負債」、自分の資産から入れた頭金が「純資本」となります。不動産投資の場合、自己資本比率が高ければ高いほど、安定した経営が可能になります。自己資本比率が低ければ経営の安定性は下がりますが、逆に資本効率(調達した資本の運用効率)は高くなるのです。

ローン返済と稼働率と自己資本

実際の不動産投資で自己資本比率を高めることがどのように影響するのかを考えてみましょう。
投資物件として、敷地面積165平方メートル(50坪)の土地に8室(4室×2階建)のアパートを購入しました。値付けは土地価格3,500万円、建物価格3,500万円の合計7,000万円です。この7,000万円の投資額に対して、全額借入をした場合と3,500万円の借入(自己資本比率50%)をした場合のそれぞれの稼働率の関係を考えます。アパートローンの利率は2%で、借入期間は20年間(元利均等返済)とします。
まずは、借入金と年間返済額の関係を考えてみます。
・ 自己資本比率0%:借入額7,000万円、利率2%→年間返済額=428万970円
・ 自己資本比率50%:借入額3,500万円、利率2%→年間返済額=214万485円

次に、アパートの賃貸料を6万円に設定した場合の稼働率と年間収入を確認します。
稼働率100%:年間収入576万円
稼働率90%:年間収入518万4,000円
稼働率80%:年間収入460万8,000円
……
稼働率75%:年間収入432万円
稼働率37%:年間収入213万1,200円

キャッシュフローが賃貸収入とローン返済のみならば、フルローンにすると稼働率75%でキャッシュフローがマイナスとなります。具体的には8室中2室が空室という状態です。一方、自己資本比率50%ならば稼働率が37%に低下するまでマイナスにはなりません。ちなみに、稼働率37%は8室中5室が空室です。
このように、自己資本比率が高いと空室リスクに対する耐性は高くなるということが分かります。

不動産投資における費用

不動産投資のキャッシュフローについて、賃貸収入とローン返済額だけを考えてみました。しかし、実際はローン以外の費用も発生します。不動産投資に必要とする費用は、大きく分けると次の3つに分類されます。

● 物件購入時に要する費用

不動産会社への仲介手数料、手付金、印紙、登記費用(登録免許税・司法書士手数料)、ローン手数料(金融機関)、火災保険、消費税、固定資産税清算金、不動産取得税などが現金で必要となります。購入する不動産価格の8~10%程度の費用となります。

● 不動産保有中に要する費用

金融資産は保有しているだけでは費用は発生しません。しかし、不動産は保有しているだけでも固定資産税や都市計画税などの費用が発生します。定期的に発生する費用の最たるものが、金融機関へのローン返済でしょう。また、稼働中の不動産には、共用部の清掃費用、小規模修理のための修繕費、エアコンや給湯器等の故障による取り換え費用などが発生します。

● 売却時の費用

不動産の売却時にも費用が発生します。株式の売買を証券会社に依頼するのと同様に、不動産の売買は不動産会社(宅建業者)に依頼します。売却時にも購入時と同様に仲介手数料が必要です。
こうしたリスクに備えるためにも、自己資本比率を高めに設定しておくことが大切です。

不動産投資をするときには自己資本比率の確認を!

フルローンやオーバーローンでの不動産投資を勧められたときには、空室時にも対応できるように自己資本比率が高い状態で始めるのがいいでしょう。そのために、頭金を確保するために貯蓄をしておくことが賢明です。自己資本は「返す必要のないお金」ですから、親族や友人との共同出資にすれば、利益は出資者で分割されますが、空室リスクへの耐性が増します。
不動産投資にはたくさんの資金が必要です。安易に判断せず、確実に利益が獲得できるような選択を心がけましょう。