賃貸業界も推進しているシェアリングエコノミー、注目される理由

情報通信システムを利用して、個人間での物や技能の貸し借りを仲介するサービス「シェアリングエコノミー」が近年さまざまな分野で見られるようになりました。そこで、今回は日本賃貸住宅管理協会も関心を寄せるシェアリングエコノミーが注目される理由を考えてみましょう。

シェアリングエコノミーとは

「シェアリング(Sharing)」とは、「分け合う」という意味を持ちます。シェアリングエコノミーの基本的なモデルは、「貸し手」が提供する物や技能を、その他大勢の「借り手」が分け合って利用するというものです。
半導体技術や通信技術、ネットワーク技術の進歩により、あらゆる情報を幅広くリアルタイムで共有できる時代になりました。その結果、「貸し手」と「借り手」をマッチングさせるプラットフォームを形成する企業が現れました。
賃貸業界にもその波が押し寄せています。不動産は未稼働の空室・空き家にも固定資産税が課税されます。そのため、賃貸業は税金やコストを意識して経営する必要があります。空室率を下げたい、空室・空き家を有効利用したいという理由から、シェアリングエコノミーが注目されているのです。

賃貸業界でシェリングエコノミーが注目される背景

賃貸業界において、貸し手と借り手のマッチングプラットフォームとは、街の不動産会社があたるでしょう。既存インフラが存在するにも関わらず新たな仕組みが要望されるのは、次のような問題が背景にあるからです。

1. 空き家率の上昇と急がれる空き家対策

5年ごとに実施される総務省の「平成25年住宅・土地統計調査」によると、国内の空き家率(総住宅数に占める割合)は13.5%に達しています。統計調査のたびに空き家が増加しているというデータもあります。また、同調査では、空き家総数820万戸に対して、賃貸物件の空き家が430万戸と半数以上を占めているのです。まさに空き家対策は賃貸業界が直面する大きな課題になっています。
今後も空き家の増加が懸念されています。その総合的な対策として、2015年に「空き家対策特別措置法」が施行されました。空き家対策特別措置法は、所有者による空き家の適正な管理推進、空き家対策の実施における種々の権限を市町村に付与することと、財政的な支援などを柱とする政策と空き家の利用・活用促進が掲げられています。

2. 外国人観光客の急増による宿泊施設へのニーズ増加

また、訪日する外国人観光客の増加を狙い、政府主導で行われているのが「ビジット・ジャパン・キャンペーン」です。このキャンペーンでは、訪日外国人観光客数を2020年に4,000万人、2030年に6,000万人にするという目標が設定されています。2016年の訪日外国人観光客数は2,400万人を突破しました。
また、国土交通省観光庁による「宿泊旅行統計調査(平成29年9月・第2次速報、10月・第1次速報)」によれば、2017年9月の外国人延べ宿泊者数は573万人泊で前年同月比+13.4%、9月としては調査開始以来の最高値、さらに10月は前年同月比+27.2%を記録したそうです。
訪日する外国人が急増する中、受け入れ施設不足が問題視されています。ホテルや旅館は高い稼働率で推移し、近年の民泊の普及は著しいものがあります。賃貸業界にとっても、こうした観光客の存在は大きな魅力となっています。

3. 人口減少と人口移動

少子高齢化で、いよいよ日本は「人口減少時代」に突入しました。今後40年以内に、国内人口は1億人を下回ると予測されています(国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」より)。人口と住宅数は相関関係にあります。この人口減少は、賃貸業界にとって逆風となるでしょう。
また最近は、利便性の高い都市部に人々が移動し、人口の粗密が強まっています。この人口の粗密は、賃貸業界において、「勝ち組」と「負け組」を生み出す原因となります。都市部と過疎地の「地価の二極化」の背景でもあります。

空き家の利用・活用に向けてシェアリングエコノミーを推進

こうした社会的背景の変化に対応するべく、賃貸業界で注目されているのが、シェアリングエコノミーなのです。最新技術の恩恵を受けて、単なるマッチングではなく、より幅広く、きめ細かくニーズとシーズ(企業の新しい技術やサービスのこと)を結びつけることができるようになりました。
日本賃貸住宅管理協会は2017年10月3日、「シェアリングエコノミー事業者協議会(仮称)」を設立すると発表しました。民泊やシェアハウス、カーシェアリングなどのサービスを取り入れて賃貸管理事業者の提案力を強化することを目的としています。また、空き家対策特別措置法の施行により、空き家の利活用促進に向けて環境整備も進められています。
ニーズも一時的な利用から定住、利用形態も住居から店舗・事務所などの業務と、幅広い使用方法が考えられます。今後、さまざまな問題や課題が登場するでしょう。しかし、シェアリングエコノミーを委縮させるのではなく、各種のトラブルに柔軟に対応できて、市場を拡大させるようなルールの制定が望まれており、縮小傾向にある賃貸業界の活性化につながることが期待されています。