新たな空き家対策 福祉施設転用の将来性は

増える空き家と足りない福祉施設(特に高齢者向け施設)は、いずれも国内において深刻化が進む社会的な問題です。最近では、この2つを組み合わせることにより解消しようとする動きが見られるようになりました。すなわち、空き家の福祉施設転用です。

歯止めがかからない空き家の増加

空き家の増加が国内では大きな問題となっています。国土交通省によると、「1年以上人が住んでいないもしくは使われていない家」は2013年時点で全国に820万戸にのぼると発表しています。
同年の住宅総数は約6,060万戸なので、7~8戸に1戸が空き家ということになります。20年前の1993年と比較すると空き家率が約1.8倍にも増加しており、少子高齢化を背景に急増している様子がうかがえます。
野村総研では今後さらに空き家が増加すると予測しており、このままでは2028年には4戸に1戸が空き家になるとする分析を発表しています。

求められる安価な福祉施設

空き家が増える一方、供給が足りていないのが老人福祉施設です。特に低コストで利用できる施設は利用待ちが多く、一時は平均3年待ちともいわれました。最近では、全般的に見ると少しずつ供給不足が緩和されつつありますが、需給については地域差が大きく、依然として施設が足りないエリアも少なくありません。
特に、高齢者が多く住む郊外の高級住宅街は地価が高い上、建ぺい率や容積率などの問題もあり、需要過多になっているケースが多く見られます。事業者にとって収入の柱である国からの補助には金額の定めがあるため、初期コストがかかるエリアには福祉施設
を作りにくいという事情があります。
そのため、多くの人が経済的な不安なく利用できる施設はまだまだ足りていないのが現状です。

建築基準法改正で空き家を福祉施設に

こういった事情を受け、政府は空き家の福祉施設転用を後押しする政策を進める方針を発表しました。その一つが建築基準法の改正です。
3階建て以上の住宅に対して、延床面積200平方メートル未満のものについては、耐火基準を緩和する方針を国土交通省は2018年2月の通常国会に提出する予定です。
同改正の主な対象となる小規模社会福祉施設については、2006年に長崎県大村市のグループホームで発生した火災などを受け、これまで厳密な耐火基準が設けられてきました。避難に要する時間を厳密に想定して、耐火構造とするよう求めているため、柱や梁などの大がかりな改修が必須でした。
改修に要するコストが、空き家の福祉施設転用を阻む壁となるケースが多かったのですが、今回の改正法が施行されれば、警報装置の設置程度で認可を受けられるようになります。
3階建ての小規模な建物は高齢者向け施設が足りない都市部に多いので、そういった地域の供給不足緩和に寄与するものと期待されています。

サブリースで運用すれば年金収入で入居も

2015年末時点における厚生年金受給者の平均年金月額は約14.8万円です。この金額内で生活必需品の購入費用や医療費の自己負担分等を賄うためには、食と住および介護を賄う施設利用料を11~12万円に抑えなければなりません。
一方、施設側は施設の運営費用に加え、高額の初期投資を返済しなければならないため、厚生年金受給者が安心して入居できる料金設定を実現している施設はまだまだ少数派です。
そのため、新たな取り組みとして増えているのが、サブリース契約による物件の確保です。施設を運用する組織は物件を購入するのではなく、借り上げることによって初期投資を抑えて施設数を増やすことが出来ます。
アパート・マンションなどの物件を保有するオーナーにとっては簡単なバリアフリー改修を施すだけで、安定的に長期のサブリース契約を結べるので、メリットが大きい方法です。
空き家の増加と高齢者向け施設の供給不足はいずれも社会の急速な高齢化によってもたらされている問題です。空き家の福祉施設転用が進めば、ある程度解消されるものの、介護の現場で働く人材が確保できなければ、稼働できない「箱」だけが残ってしまいかねません。
発想は悪くないものの、今後人材を確保する妙手が実現しなければ、絵に描いた餅になるのでは、とも考えられます。