「選択と集中」という言葉を聞いたことをある方も多いと思います。企業が本業に特化し、高収益を上げていくという経営方針です。
バブル崩壊後、総合電機メーカーなどの業績が著しく落ち込んだことから、総花的な経営が否定され、ある事業に特化した収益性の高い企業がもてはやされました。そこで一流企業も「選択と集中」という方針を掲げ、経営改革に乗り出していきました。
そんな「選択と集中」も、企業経営においてその経営方針が必ずしも正解という訳ではありません。確かにバブル崩壊時のような短期的な視点で見ると、正しい側面はあったのかもしれませんが、長期的な視点で見ると、異なるケースも存在します。
「100年企業」の栄枯盛衰
日本は社歴が100年を超える「100年企業」が世界的に見ても多い国と言われているのはご存知でしょうか。「100年企業」の中でも代表的な企業は酒蔵です。国内のほとんどの酒蔵は、幕末または明治初期に創業されたものが多く、今でも全国に数多く存在しており、世界中にファンがいます。
戦前までは、お酒と言えば日本酒という時代が長く続いていましたが、今ではビールやワイン、ウイスキーが一般化され、飲食店のメニューのアルコール類も多種多様になり、日本酒を嗜む機会が少なくなっていると言えます。
このように100年というスパンでものごとを見ると、1つの産業の中では大きな栄枯盛衰があることが分かります。昔は儲かったものでも、新たなジャンルの産業の参入やテクノロジーの発展や法改正等により安くて質の良い代替品が登場すると、元々の産業が衰退していくというパターンは良くあります。
「100年企業」の経営戦略
ではこのような栄枯盛衰をたどってきた酒蔵がなぜ未だに潰れないのでしょうか。
その答えの1つに不動産があります。元々、酒蔵は地元の名主だった家が始めたケースが多く、土地もたくさん持っていました。
現在まで経営を続けられている酒蔵の中には、賃貸オフィスや賃貸アパートを持っている酒蔵も多く、安定した賃料収入が長く会社経営を下支えしています。酒蔵によっては、売上の過半数以上を不動産の賃料収入に頼っている会社もあるくらいです。
世界中にファンがいる日本の純米酒ですが、普通酒の国内市場は完全な斜陽産業と言えます。100年というスパンを考えると、日本酒業界は大きな栄枯盛衰がありましたが、そのような中で会社が存続できたのは、安定した不動産収入があったからに他なりません。
選択と集中だけが答えではない
バブル崩壊直後、しきりと「選択と集中」という経営方針が叫ばれましたが、長期的な視点に立つと、100年存続しているような企業は、実は選択と集中なんかしていなかったということになります。
もし現在残っている酒蔵が、酒造りだけに特化していたら、時代の荒波に巻き込まれて消えて無くなっていた可能性があります。不動産賃貸業も併せて行うことで「リスク分散」を図っていたからこそ、100年の時代を乗り越えることができたと言えるでしょう。
今後はAIの導入によって、将来の日本は様々な職種が無くなり、仕事が半減すると言われています。これは経営環境の大激変を予感させるとてつもない脅威です。誰も予測できない将来ですが、その時に不動産の家賃収入があなたの会社を助けてくれることは間違いありません。
今後を生き抜く上で大切なキーワードは、「リスク分散」であり、その最も有効な手段が不動産投資と言えるでしょう。