不動産投資で利回りの高い物件を探そうと思うと、価格の安い物件がばかりが多くなります。特に中古物件は新築と異なり売主が自由に価格をつけることができるので、相場からかけ離れた非常に格安のアパートやマンション物件が見つかることもあります。
しかし、格安であるということは、それなりの事情があると考えることができます。高い利回りに気を取られて安易に格安物件に手を出してしまい、結果的に失敗してしまったというお声もしばしば聞きます。今回は、そういったよくある「格安物件の失敗」についての実例を取り上げてみます。
1. オーナーチェンジ物件
オーナーチェンジ物件は、買主の自由度が低いので、相場よりも安く購入できるケースが多いです。また、すでに入居者がいることで、購入直後から収入が見込めます。
買主にとっては、すでに入居者がいると「その人はずっと住んでいてくれる」と勝手に考えがちですが、その入居者が長く住むという保証はありません。極端に言えば、どんなに居住歴の長い人でも、物件を買ってすぐに退去を申し出る可能性は十分にあります。
長く住んでいる居住者の場合、物件が新築で状態が良かった頃に入居して、その時の家賃をずっと払い続けています。その人が退去して、再募集をかける場合、以前と同じ賃料設定で入居者を募るのは難しい可能性が高いのです。
もう一つの問題は、入居者がいる場合、部屋の状態を実際に確認できないことです。もちろん、敷金の状況や修繕の履歴などは購入前に確認できます。しかしオーナーチェンジで購入し、長く住んでいた人が退去した後に部屋を見たら「部屋の壁紙がボロボロ」「水漏れがひどい」などのトラブルで、敷金だけでは賄いきれないような修繕が必要になるケースも少なくありません。オーナーチェンジ物件で価格が安い時は、それなりの理由があると考えておくべきでしょう。
2. 家賃相場を調べず、提示された利回りに釣られる
「物件価格が安い」「利回りが非常に高い」などの魅力的に見えるポイントは、訴求力が高いので売る側も強調しますし、買う側もつい関心を向けてしまいます。しかし、その価格や利回りが正しい根拠に基づく数字なのかどうかを、自分自身で判断できるようにならなければ、見せかけの安さやお得さに気を奪われて、後で損をすることが出てきます。
例えば、物件価格300万円のワンルームが「利回り20%」と売られていたら、ものすごくお得に感じるでしょう。この場合、想定家賃は5万円になります。問題は、本当にそのワンルームに家賃5万円で入居する人がいるのかということです。少なくとも、周囲の競合ワンルームマンションの賃料相場は確認してください。このような場合、実際は3万円程度の家賃しか付けられなかったということが起きる可能性があります。利回りは鵜呑みにせず、本当に想定家賃が適切なものかを見極めてから、購入の判断をする必要があります。
3. 副業で不労所得のつもりが管理で大変に
不動産投資は、不労所得の代表格のように扱われることが多いです。確かに、株や為替などは相場を常に見ておく必要がありますし、刻々と変化する相場ではいつ損を出すかわかりません。その一方で不動産投資は、入居者募集に苦労したとしても、一度決まれば契約更新まで住んでくれる可能性が高く、毎月の家賃収入があります。
しかし、築30年などの築古・格安物件では、メンテナンスなどが必要になったり、災害の影響を受けやすくなったりする場合があります。大規模修繕まではいかなくても、設備の交換や外壁などをチェックしなければなりません。また、古い格安物件では防音性が低い可能性もあるので、その場合は騒音問題なども起きる可能性もあります。
そう考えると格安で状態の悪い物件は、物理的にも精神的にも負担が大きく、不労所得どころか副業で運営するのが難しいかもしれません。
4. 大学が撤退してしまった
格安のマンションやアパートは一人暮らし用が多く、大学生や若いサラリーマンがターゲットとなります。例えば、大学の近くや最寄り駅の周辺には、その大学に通う学生たち向けのワンルームなどの物件がよく建てられています。そこで起きる失敗が、大学の撤退による需要の急激な落ち込みです。
1980年代、大学は郊外の土地を求めて、都心から離れた場所にキャンパスを展開しました。しかし、近年は少子化に伴い、都心に回帰する大学が増えています。大学生だけに需要を依存した大学付近の物件には、大きな痛手です。賃貸需要のない郊外に格安の老朽アパートだけが残るのです。
最後に
今回は、格安賃貸物件にまつわる失敗事例をいくつか紹介しました。こうした失敗が起きないようにするために、格安物件を購入する際は立地や家賃相場、入居者の管理状態などを、事前に自分の目でじっくりと確認してから購入を検討してください。