アパート経営は、不動産収入を得られる方法のひとつです。アパート経営による不動産収入があり所得税が発生する場合は、確定申告をして納税しなければなりません。確定申告をスムーズに進めるには、経費として認められる費用の種類や計算の仕方、手続きの進め方をあらかじめ調べておくことが大切です。事前にさまざまな情報を把握しておけば、実際に申告する時になっても慌てずに手続きを進められます。本稿では、不動産経営に関する確定申告の方法やポイントについて紹介します。
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アパート経営で確定申告が必要になる条件
アパートをはじめとする不動産経営では、家賃収入として所得が発生します。所得が発生した際は収支を計算し、所得税を納めるための確定申告が必要となります。自分で計算を行い、実際の所得金額に応じて所得税を納める仕組みです。
アパート経営で不動産所得を得ている人は、納税者として確定申告を行う義務があります。所得の計算をして新たに税金が発生する場合は、申告して納税しなければなりません。しかし、副業としてアパート経営をしている場合は、申告をしなくてもよいケースがあります。給与所得以外の所得が年間で20万円を超えない場合は、確定申告の必要がありません。20万円の制限は、不動産所得を含めた金額であることに注意しましょう。
確定申告の手続きの仕方
確定申告を行うには、所在地の管轄である税務署に「個人事業の開業届出書」を提出する必要があります。アパート経営を開始した日から1か月以内に届出書を提出していないと、確定申告のときに控除などの制度が適用されないので気をつけなければなりません。1月1日~12月31日の所得分を計算し、翌年の2月16日~3月15日までに申告します。
確定申告の種類は、「青色申告」と「白色申告」の2種類に分けられます。青色申告ができるのは、「個人事業の開業届出書」と同時に「青色申告承認申請書」を提出している場合です。申請書を提出していないと白色申告となり、青色申告ができないので注意しましょう。
青色申告と白色申告の大きな違いは、特別控除や損失繰越の可否です。白色申告では特別控除はありませんが、青色申告の場合は条件を満たせば最大で65万円の控除が受けられますので、所得税の負担を軽減することが可能です。また、青色申告では発生した損失を3年間繰り越せます。損失の繰り戻しもできるので、所得税の還付も受けられるのが特徴です。
不動産所得の計算のポイント
アパート経営を初めてする場合は迷ってしまいがちですが、「収入」と「所得」は異なります。収入は、アパート経営して得た全体のお金のことを指し、不動産収入として代表的なものには家賃収入が挙げられます。
ほかにも、名義書換料(承諾料)・更新料・礼金・共益費が主な収入となります。全体の収入から経費を差し引いた金額がアパート経営の所得(不動産所得)です。
確定申告は、1年間の収入から必要経費を差し引いて所得を算出し、適切な所得税を決定するために行う手続きです。所得税は、全体の収入ではなく所得に対してかかります。そのため、所得税の計算をするときは不動産所得の金額に注目しなければなりません。
適切な所得を算出するには、収入の金額と差し引ける経費の種類をしっかりと把握しておく必要があります。
アパート経営の経費として認められるものは何?
アパート経営するうえで、設備の維持や税金などで支払った費用は経費として収入から差し引くことが可能です。経費として認められる費用の内訳は、確定申告の計算をするときや、帳簿に仕訳するときにも必要な知識です。
ここでは、主な経費を紹介します。
アパート経営の主な経費となるものには、委託管理費・委託手数料・水道光熱費・立ち退き料・修繕費・保険料が挙げられます。
委託管理費・委託手数料は、アパートの管理を不動産会社へ任せている場合に発生する費用で、管理を委託している不動産会社に支払います。
エントランスなど共用部分にかかる水道光熱費も経費に含めることが可能です。住人が支払っている住居スペースの水道光熱費は経費に含まれません。
立ち退き料とは、賃貸人の要請に応じて賃借人が物件を立ち退く場合に、その代償として支払われる費用で、不動産所得の金額の計算上必要経費として認められます。
修繕費は、建物や設備の修繕・入居者入れ替え時のメンテナンスにかかった費用です。
また、火災保険・地震保険といった損害保険の掛金も当年分が経費として認められます。
そのほかにも、借入金の利子・租税公課・減価償却費があります。アパートや設備を取得する際はローンを利用して購入し、ローンの利用によって発生する利子は、経費の対象となります。
租税公課とは、アパートの取得に関係するさまざまな税金の総称を指します。取得時に支払う登録免許税・不動産取得税・印紙税をはじめ、固定資産税や事業税も経費の対象です。アパート経営に直接関係しない所得税・住民税・相続税は経費に含まれません。
建物や設備は年々劣化が進んでいきます。使用年数に応じた価値に調整するための経費が減価償却費ですので、建物や設備の耐用年数に合わせて毎年適切な金額を計上する必要があります。
覚えておくべき損益通算とは?
アパートを取得した初年度など、支払った費用の金額が所得よりも大きい場合は赤字になってしまいます。確定申告で所得税の計算をするときに大きく役立つのが損益通算です。
損益通算とは、控除後の所得金額と不動産収支内訳書の赤字を確定申告で相殺することを指します。不動産所得がマイナスでも他の所得がプラスであれば、マイナスの分だけ金額を差し引ける仕組みです。不動産経営のみを行っている場合は、損益通算の結果を最長で3年間繰り越せます。利用すると所得にかかる税金の負担が大きく軽減されるため、ぜひ覚えておきたい制度です。なお、節税できる税金の種類は、所得金額によって決まる所得税や住民税などです。
損益通算できる所得の種類はあらかじめ決められています。不動産所得は、一時所得・雑所得・配当所得とは損益通算できないので注意しなければなりません。
アパート経営者ができる節税対策
アパート経営者ができる節税対策としては、経費にできるものはすべて計上する、損益通算を活用するといった工夫が挙げられます。収入に占める経費の割合を大きくし、所得金額を小さくする工夫です。また、損益通算を活用すればプラスとマイナスを上手に相殺できます。
損益通算を行わないと税金を必要以上に支払ってしまうおそれがあるため、それぞれの所得額をよく確認しましょう。しかし、アパート経営で儲かることを念頭に置くのであれば上述した節税対策はあまり意味をなさず、節税しても収支のバランスが改善されるとは限らないからです。
また、経費に計上できるからといって、”節税対策のために”アパート経営を始めるべきではありません。資金や設備の管理など、多くのリスクや注意点を検討してから始める必要があります。
税理士に任せるという方法もある!
税制の専門家である税理士に申告を任せるメリットとしては、申告書の作成が早い、税務署への対応も任せられる、将来を考えた申告書を作成できるなどの点があります。自分で計算して申告書を作成するよりも、専門家である税理士のほうが早く作成できます。
提出期限に間に合わないといったトラブルも起きません。また、税務署から調査があったときでも、税理士を通せば話がスムーズに進みやすくなるうえに、税理士によっては将来的に融資が受けやすくなるような申告書の作成をしてもらえる場合もあるのです。
いかに税金の対策をするかがポイント!
アパート経営を進めるうえで欠かせないのが確定申告です。申告した所得金額で、税金が決まります。そのため、確定申告をする際には、経費を計上したり損益通算をしたりして、いかに税金の対策をするかが重要です。
節税を頭に入れながら制度を上手に活用して、正しい確定申告を行いましょう。