マンション・アパートの3つの「管理形態」を知る

賃貸経営において、「賃貸管理」は「物件」と並ぶ重要な要素。いわば車の両輪と言っても過言ではありません。賃貸管理といえば、昔は入居付けから入居者管理、建物管理まで丸ごと引き受けるのが普通でした。

しかし、最近は細分化・専門化が進み、どのような管理会社・管理形態を選ぶかで、収益性や経営の安定性が大きく左右される時代へと変わりつつあります。

まずは、賃貸管理のアウトラインを押さえておきましょう。

入居者管理と建物管理

賃貸管理は、大きく「建物管理」と「入居者管理」の2つの業務に分けられます。

・ 建物管理業務
敷地や共用部の清掃、設備(照明・消防設備・給水ポンプ・エレベーターなど)の点検整備、植栽の手入れなど、「ハード面」の管理業務

・ 入居者管理業務
入居者募集、現地案内、賃貸借契約、家賃徴収、入居者からのクレーム受付と対応、入退去時の立ち合いや清算業務など、「ソフト面」の管理業務

これらの業務は、決して入居者のみへのサービスではありません。その一つひとつが経営に直結する、むしろ、大家さんのために必要な業務なのです。

例えばどんなに優良な物件でも、雑草が伸び放題で放置自転車やゴミが散乱していれば敬遠されるうえに、質の悪いたちが入居者として集まるようになります。やがて、それが家賃の滞納や近隣トラブル、退居時のトラブルなどに発展するケースも心配されます。

そうなってからでは手遅れで、家賃の低下や空室率に歯止めがかからなくなります。またせっかく入居してもらっても、トラブルなどへの対応が悪かったり遅かったりすると、すぐに引っ越さしてしまう可能性があります。

管理の良し悪しは、そのまま経営に直結するものです。高い収益性を維持するには、「管理こそが鍵」と言えます。建物の経年劣化は避けられませんが、適切な管理を行うことで、より長い期間、収益性を維持してくれるというわけです。

3つの管理形態

実際にアパートやマンションを経営されるオーナーは、次の3つの管理形態の中から自分に合った方法を選んでいます。

1)自主管理
オーナー自身が管理を行う方法。設備の点検整備はA社、建物の補修はB社、壁紙の貼り替えはC社など、オーナーが直接、個別に発注して全体を把握します。小規模な物件なら、掃除や除草を自分で行うケースも多いようです。中間業者が入らないため、コストが抑えられて、また、管理業者への委託費用も発生しません。

しかしその反面、家賃の滞納やクレームが発生した際には、大きなストレスを抱え込むことになります。クレームは24時間・365日待ったなし。ゴールデンウィークや正月でも呼び出される可能性があるのです。

入居者から管理費を頂いている以上、大家さんは即座に対応する義務を負っています。自主管理を行うには、相応の覚悟が必要です。

2)委託管理
専門の賃貸管理会社に委託料を支払って管理してもらう方法。ひとりの担当者が複数の物件を管理する仕組みのため、1物件当たりの管理委託料は低く抑えられ、家賃のほんの数%で代行してもらえます。

管理会社に丸ごと委託してしまえば、大家さんは精神的にも肉体的にも、ほぼ一切の管理業務から解放されて、まさに“毎月家賃が振り込まれるのを待っているだけ”で良くなります。なお、建物管理から入居者管理まで丸ごと委託するのが「全部委託」、一部の業務のみを委託するのを「一部委託」と言います。

近年、管理会社の専門化が進んでおり、客付けを専門に行う客付け会社や、家賃の滞納を保証する会社、空室でも家賃を保証する会社など、さまざまなサービスが生まれています。

3)サブリース
不動産で言うところの「サブリース」とは、管理会社などが建物を丸ごと借り上げ、入居者に「又貸し」する方法を指します。大家さんは入居者一人ひとりに貸し出すのではなく、管理会社などに丸ごと貸し出します。

借り上げた管理会社は実際の入居率に関わらず、毎月一定の家賃を支払ってくれる(家賃保証)ので、大家さんの経営は安定します。また、入居者と契約を交わすのは借り上げた会社なので、入居者とのトラブルなども大家さんには無関係です。

ただし、保証家賃は直接大家さんが貸し出した場合よりも10%程度は低く設定されるのが普通です。また、一定期間ごとに見直される契約になっているケースがほとんどなので、注意が必要です。少なくとも、最初に提示された保証家賃が20年、30年と維持される可能性は低いと思っておいた方が良いでしょう。

賃貸経営における管理業務の大切さと、その形態について説明しました。

3つ挙げた中で、管理費用が安く済むのは「1.自主管理」「2.委託管理」「3.サブリース」の順です。管理の煩わしさがないという点では「1.サブリース」「2.委託管理」「3.自主管理」の順でしょう。

コストを取るか煩わしさを避けるかで、採用する管理形態は大きく変わります。初めて賃貸経営を始めるなら委託管理から始め、経験とノウハウを積んでから自主管理やサブリースを選んでみるのも一つの方法かもしれません。