これから賃貸経営を始めようとしている人の多くが最初に迷うのは、「中古物件」と「新築物件」のどちらを取得するかでしょう。この選択は初心者には判断が難しいように思います。そこで、双方の特徴を理解するとともに、具体的な状況によって、どちらが良いのかを考察してみましょう。本稿では、マンションにフォーカスして考えていきます。
Contents
1)新築と中古、それぞれの特徴
賃貸経営において、「新築」と「中古」のどちらが良いのかという問題は永遠の課題でしょう。結論から先にいえば、各投資家の志向や条件、属性で変わるということです。どちらを選ぶのかを判断する際に、参考にすべきポイントがあります。「新築」と「中古」の特徴を正確に認識した上で、物件を選ぶ必要があるのです。
新築物件の特徴
・借主が見つかりやすい
新築物件は誰も居住していませんから、当然きれいです。設備も最新のものが使われています。借主の募集の際も、「新築物件」という点は大きな魅力になり、借主が付きやすいことは大きなメリットでしょう。
・賃料が高く設定できる
賃料については、新築物件だと多少割高な賃料設定が可能になります。
・金融機関の融資が受けやすい
金融機関は物件の評価額の範囲で融資します。その点、新築物件は物件の価値が明らかなので、銀行の融資を受けやすいというメリットがあります。逆に、中古物件はその価値が明確でないため、希望額で融資が受けられないこともあります。また、新築物件は提携ローンが利用できる場合があります。つまり、購入時の資金調達が容易なのです。
・リフォームや修繕の必要がない
中古物件の場合、築年数や前所有者の使用状況などによって、物件取得後に経年劣化や傷・汚れの修繕が必要になるかもしれません。また、マンション全体の大規模修繕で、追加の費用負担を求められるリスクもあります。
中古物件の特徴
・物件価格が安い
中古物件の一番のメリットは、新築物件に比べて価格が安いことでしょう。初期費用が安いので、自己資金が少ない人向けといえるかもしれません。
・物件が豊富
中古物件は数も豊富です。その中から、良い物件を探して選ぶことができます。過去に販売された好立地の物件も少なくありません。一方、新築マンションは駅近など立地の良いエリアに建設されることが多く、既に好立地に建設済みというケースがほとんどなので、優良物件がなかなか見つかりにくいという傾向があります。
・高利回りが期待できる
物件の取得費用が安く済むので、高利回りが期待できます。新築物件は取得価格が高いので、実質利回りは低くなりがちです。
2)「新築」と「中古」のそれぞれの具体的な損得
新築マンション・中古マンションの特徴を簡単に確認したところで、今度は「どちらが良いのか」を具体的に考えてみます。
すぐにマンション経営を始めたい
好立地の新築マンションがなかなか見つからない理由はご説明したとおりです。仮に、そういった新築物件が売り出されても、価格が高額だったり完成・引渡しまでに時間がかかったりと、なかなか取得できない場合が多いのです。すぐにでもマンション経営を始めたい方は、中古マンションを選択するのが現実的でしょう。ただし、中古物件の場合は銀行融資が受けにくいので、融資の可能性を見極めながら慎重に物件を選択してください。
相応の自己資金が準備できる
ある程度の自己資金が用意できて、銀行融資を受ける必要性があまりない場合も、中古マンションは合理的です。借入額を抑えることができれば金利負担が軽くなるので、その分高い実質利回りが期待できるからです。
長期的な視点でマンション経営をする
長期的な視点で堅実なマンション経営を考えている人には、好立地の新築物件をじっくりと待つのがいいでしょう。新築マンションは、購入後の維持・管理の面で中古物件よりもリスクが少ないです。長期的な視点に立てば、安心して取得できるというメリットがあります。万が一、物件に瑕疵があった場合でも、住宅の品質確保に関する法律によって、売主は10年間の瑕疵担保責任を負いますのでオーナーは安心できます。
とりあえず、マンション経営という場合
こういう人は、初期費用が少ない中古物件が始めやすいと思われるかもしれません。しかし、中古マンションは、自己資金が必要だったり物件を見極める力が必要だったり、取得後に修繕などの費用負担が発生するリスクがあったりと、初心者には難しい面があります。これらを考慮すると、多少初期費用が高くても、リスクの少ない新築物件を探すほうが安全といえます。万が一、マンション経営から撤退する場合でも、新築マンションはそれなりに高い価格で売却できることがあるためです。
物件の資産価値を考慮したい
当面は賃貸経営をするが、将来的は売却で利益を出したいという人には、新築物件をおすすめします。マンションの資産価値は、経年とともに低下します。一般的に、中古よりも新築のほうが将来高く売れる可能性があるといえます。一方で、立地条件や構造、設備面などが整った優良物件であれば、築古になっても資産価格が下がらないケースもあります。そのような物件が見つけられれば、中古物件であっても長期的にも十分な資産価値を見出せます。
本稿では、新築物件と中古物件の良し悪しを判断する上で、マンションに焦点を当てて参考になるポイントをお伝えしました。ただし、新築・中古にかかわらず、賃貸経営で最も重要なのは「空室を作らない」ということです。いくら立派で設備が充実している物件でも、入居者がいなければ家賃収入はありません。
「新築」の訴求力が高いことは間違いありませんが、最初の入居者が退去すれば、次の募集から「新築」ではなくなるのです。「新築」「中古」ということよりも、「入居したい」と思えるような立地や間取り、周辺環境などの条件を満たした物件を選択することです。そうした物件が見つかったときに、ご紹介したポイントを参考にして、最終的な判断を下すようにしてください。