「不動産の価値は、生み出すキャッシュで決まる」と考えている不動産投資家の中には、キャッシュを生み出さない自宅を「負債」と見なす人もいるようです。しかし、自宅は本当に負債でしかあり得ないものなのでしょうか。
自宅は収益物件と異なり、キャッシュを生みません。収益を出さない不動産のためにローンを組み、金利を払ってまで購入するのは、投資家としては不本意だという考え方もあるようです。しかし不動産の資産価値は、売却価値と収益価値に大別されるため、たとえ賃貸収入がなくとも売却益を得ることができる可能性があります。
土地と建物の資産価値とは?
不動産は土地と建物に大別されます。ぞれぞれの資産価値について考えてみましょう。
土地は、利便性の向上や再開発、経済状況などによって価格が変わるので、上昇・下落の双方の可能性があります。
国土交通省の公示価格を見ると、コロナの影響もあってか、住宅地の地価の変動が目立っています。地方についていえば、毎年下落し続けるところが多いのが現状ですが、東京や・大阪・名古屋圏は郊外含めて上昇している年もあります。売却価値を見込むなら、エリアの選定がより重要になってきます。
建物の場合、基本的に上昇することはありません。大規模なリフォームによって価値が上がることもありますが、これは一種の建て替えであり、時の経過とともに建物の価値は下落します。
一般的に中古住宅の場合、20年で資産価値はゼロになると言われています。マンションの場合はさらにシビアで、土地を全部屋で割るため、一戸当たりの価値に占める土地価格の割合は一戸建てよりも小さく、一戸建てよりも、下落幅が大きいとされます。
ただし、マンションの場合は建築当初から修繕計画があり、それに沿った修繕積立金を積み立てるのが一般的です。適切な修繕により資産価値の下落が抑えられるというケースも多く、マンションを購入する場合は修繕計画や住民の管理意識を確認しておくと良いでしょう。
エリア選別と臨機応変な対応が重要
前述の公示価格では、住宅(戸建・マンション)の価格は、一部の都市を除き下落傾向です。このような状況の中で、不動産の資産価値を維持するには、いかに値下がりしにくい土地を選ぶかがカギです。
不動産の資産価値には、いくつかの考え方があります。特に「利便性」と「安全性」が重要です。
両者の内容は、毎年進化しています。例えばかつて利便性といえば、立地、すなわち駅からの距離と交通の便に尽きましたが、最近はそれにとどまりません。買い物や金融機関、学校などといった生活利便性、おいしい飲食店やオシャレなショップがあるといった娯楽性も含め、総合的な判断が必要です。また、安全面に関しても、以前は防犯という視点が主でしたが、最近では災害リスクも重要なウエイトを占めています。
特に最近の傾向として、間取りや駅までの距離といった局地的判断だけでなく、街そのものの価値が、資産価値に影響するようになってきています。
メンテナンスや早めのリフォームを考えてみて
どんなに厳しい目でエリア選別をしても、思惑が外れたり、想定外の事態で、土地が値下がったりしてしまうことがあるでしょう。こうした土地の不動産価値は、取得後にコントロールはできませんが、建物の不動産価値は努力で変えることができます。
資産価値を高めるために、こまめにメンテナンスすると、家の寿命は長期化します。こうしたメンテナンスの仕方は、リフォームの際の工事費を抑えることが可能です。転売という視点からは、常時メンテナンスをしていれば、売り時を逃さないというメリットもあります。家の傷みが激しいので、売りだす前にリフォームをしていたら時期を逃してしまった・・・などという事態にならないようにしましょう。
自宅は資産になる。ただし・・・
さて、結論です。こう考えれば、やはり自宅は資産でしょう。ただし、不動産投資対象を決めるのと同様に、賃貸の運用や売却で、収益を生みだすことができるどうかという観点で選定し、かつ、思惑通りに成功した場合という条件付です。
仮に資産価値がマイナスとなったとしても、マイホームとしての住まい(利用)価値は別物です。「終の棲家」と考えれば、決してマイナスばかりとは言えないでしょう。