自己資金100万円から始める不動産投資

不動産投資には、他の金融商品にはない「長期間の借り入れが利用できる」というメリットがあります。株式投資などでは、信用取引という借り入れと似た制度を利用できますが、その期間は短く、信用取引により購入した株式の日々の価格によっては「追証」と呼ばれる、追加資金の納付を求められるケースもあります。

なぜ、不動産投資は何十年という借入制度を利用できるのでしょうか。そこで本稿では、他人のお金を利用して、自己資金が少なくてもチャレンジできる不動産投資の強みについて考えていきます。

不動産投資が他人資本を利用できる理由

不動産投資の最大のメリットは、借り入れによって自己資金以上のお金を動かすことができる点にあります。不動産投資の利益の源泉は、借入金利と貸し付け家賃からの収益との差額にあります。

例えば、自己資金100万円で利回り10%の投資を行っても、10万円の利益しか得られません。しかし、2%の金利で3,000万円の融資を受け、表面利回り10%のアパートを購入した場合、支払う金利は3,000万円の2%である60万円となります。一方、受け取る賃料は3,000万円の10%である300万円ですので、300万円-60万円=240万円が利益となります。

同じ利回り10%の投資をした場合でも、自己資金だけのときと融資を受けて不動産投資をしたときとの収益差は、なんと24倍になります。このように、少ない自己資金で多くの利益を上げられることを「レバレッジ効果」と呼びます。

不動産投資は、会社の業績に左右される株式投資とは異なり、不動産という確固たる財産を担保にできます。つまり、「自己資金+借り入れを行う者の信用+不動産の資産価値」を、他人資本の提供者である金融機関に差し入れて、その対価として多くの資金を長期的に借り入れることができるわけです。

お金を有利な条件で借りる

金融機関で若干の差異はありますが、借り入れ交渉の際に「お金を貸しても大丈夫そうだ」と思わせるには、いくつかポイントがあります。不動産投資を始める際に、次の3つのポイントに注意を払うと、借り入れのハードルを大きく下げることができるでしょう。

1. キャッシュフローがプラスになる不動産を選ぶ

キャッシュフローは、いわゆる実際のお金の「出入り」のことです。不動産投資においてお金が出入りする要素は、家賃収入と諸経費、ローン返済金です。近年は不動産価格が上昇し、「家賃収入 < 諸経費+ローン返済金」となっているケースがふえました。

会計学から見れば、ローン返済金の中には「元金の返済=自分の資金の増加」という要素もありますが、キャッシュフローの観点から見ると、お金が出て行ってしまうことに変わりありません。

2. 空室対策を行う

アパートやマンションなどの不動産投資で、常に満室という物件はなかなかありません。多かれ少なかれ、オーナーは空室リスクに対応する必要があります。空室が発生すれば、その部屋からの家賃は得られませんので、キャッシュフローは悪化します。目安としては、家賃収入が満室稼働時の80~90%になっても、キャッシュフローがマイナスにならない物件を選ぶとよいでしょう。

キャッシュフローを安定させる別の方法としては、「サブリース(転貸)契約」もあります。これは、管理会社などが、オーナーの所有する物件を周辺相場よりも安値(サブリース料)で借りて、相場価格で他者にまた貸しすることで利益を上げる仕組みです。

サブリース契約により管理会社は差益を得ることができ、物件のオーナーは空室でも管理会社から満室稼働分の家賃が得られるため、キャッシュフローを安定させられます。

3. 資産価値が高い物件を選ぶ

不動産を担保とした融資は、原則として「法定耐用年数」を超えて借りることができません。法定耐用年数は木造で22年、マンションなどの鉄骨鉄筋コンクリート造は47年です。そのため、築年数の浅い物件や、三大都市圏の中心部に近くにある魅力的な物件に投資したいものです。資産価値が高い物件であれば、いざとなれば売却して資金が回収できるため、金融機関も融資しやすくなります。

人口減少が続く現在の日本では、職や利便性を求め、大都市圏に人が集まります。人口が集中すれば、今以上に住宅供給の必要がありますが、利用できる土地には限りがあるため、中心部では土地を有効活用できるマンション需要がますます増加するでしょう。逆に、郊外や地方都市は入居者を集めるのに苦労するかもしれません。

「元手」があり、借入金額を抑えて不動産投資ができれば、キャッシュフローがプラスとなる物件をふやせるでしょう。結果的に月々の返済も減り、家賃収入が少なくても損益分岐点をクリアできます。反対に、元手がない(ゼロ円)あるいは少ない状態でも、借り入れを上手に利用することで不動産投資はスタートできます。

用意できる自己資金が100万円だったとしても、やり方次第でより安全で資産価値の高い物件を選ぶことができます。資金がないからと不動産投資を諦めている方も、本稿を参考にしながら、不動産投資を始めることを検討してみてはいかがでしょうか。