アパート経営をするにあたって、金利の上昇や維持修繕にかかるコストの増大は頭が痛い問題です。しかし、これらの問題以上に収入に直接影響を与えるのが空室問題です。これに対処するためには、入居者ニーズを踏まえた設備への理解が欠かせません。アパートオーナーが、需要の減退する少子化時代の賃貸経営を勝ち抜くためには、どのような戦略が必要でしょうか。そこで本稿では、空室リスクを最小化させるためのアパート経営に必要な設備について解説していきます。
人気の賃貸設備とは
2017年10月16日に全国賃貸新聞が発表した「入居者に人気の設備ランキング」によると、単身もファミリー向けも「インターネット無料」が第1位です。また、エントランス部分の「オートロック」が第2位と同順位でランクインしています。
これらは、現在考えられる”付加価値を高める設備”であると考えられます。同時に「この設備がなければ入居が決まらない」という調査も行われており、賃貸経営者にとってはチェックしておきたいランキングと言えるでしょう。
同調査によると、単身者向けの1位は室内洗濯機置き場、2位はテレビモニター付きインターフォンがランキングされ、ファミリー向けには1位は追い炊き機能、2位は独立洗面化粧台となっています。注目すべきは「インターネット無料」が単身者向けでは5位に入り、オートロックは単身者向けでは6位でファミリー向けでも8位に入っていることです。
高付加価値化のための設備であるはずのものは、実は必須の設備のランクにも入っています。つまり、アパートオーナーが賃料を高くすることを目的に、インターネット無料のための設備投資をしても、それがあるのが当たり前と感じる人も高い割合でいる可能性があるのです。そのため、物件の魅力として差別化をしにくいばかりでなく、設備投資を回収するため賃料を上げた場合には、むしろ空室リスクが高くなるおそれもあり、注意が必要です。
変化する設備のニーズ
インターネットは従来、ブロードバンドが接続できる環境を作れば十分と言えました。あとは、各入居者が必要であれば申し込みして月額使用料を支払って利用していました。しかし、近年はネットの接続が有線からWi-Fiなどの無線に切り替わり、接続そのものが入居と同時にできて、無料であることが求められているのです。
例えば、ビジネスホテルはかつてネットの接続料として1日の使用料を課金していた時代があります。しかし、近年はチェックインと同時にパスワードが渡されて、無料でWi-Fiを使えることが一般的です。考えてみれば、空間を賃貸する点ではアパートもホテルも変わらないでしょう。貸し出す期間が1日単位か1か月単位かの違いであって、室内空間の快適さや便利さを求めることには違いがありません。
このように、アパートを含めた賃貸物件の設備は、今後もホテルの設備を追いかけていくものと考えられます。
入居者に寄り添った空間づくりを
空室リスクを避けるために必須の設備は、時代と共に変化していきます。現在、付加価値が高まると考えられている設備でさえ、すぐに必須の設備となってしまう可能性はあるでしょう。
入居者のタイプによっても、必要となる設備は変わります。例えば、若者には必要のないバリアフリーや見守り機能は、高齢者には必要です。都心ではあまり意識されませんが、車での移動が生活の中心になる地方都市では、駐車場は最低でも1室あたり1台分は必要でしょう。しかし、シェアリングエコノミーの広がりによって地方でもカーシェアを利用する人がふえれば、それも変わるかもしれません。マンションでは設置がふえてきた電気自動車の充電スタンドも、あっという間にアパートでの必須設備になるかもしれません。
このように現代のアパート経営は、居住者そのものが多様化し、居住者の暮らし方や生活スタイルの変化に合わせてニーズもどんどん変わってきます。アパートオーナーとしては、本稿で紹介したランキングを参考にしつつも、それに一喜一憂することはしないようにしましょう。
しっかりと自分のテナントに向き合い、快適な空間づくりをしようとする気持ちが最も大切なポイントです。