アパートや賃貸マンションなどの賃貸物件を建築する場合、竣工時期がとても重要です。
賃貸マンション開発業者も、最初に希望の竣工時期を定め、そこから逆算して着工などのスケジュールを決めていきます。
賃貸物件で良い竣工時期の一つに「夏場」があります。そこで本稿では、夏場にアパートを竣工させるメリットについて解説していきます。
竣工は引越のトップシーズンの前に合わせるのが基本
アパートの一番の理想的な竣工時期は2月です。4月からの新生活に向けて、3月は日本国内の引越が最盛期を迎えます。2月に竣工しているアパートは、3月のトップシーズンのときに「新築物件」として売り出すことが可能です。3月の賃貸需要をしっかりと取り込めると、初月から満室稼働となることも多くあります。
では、2月を逃してしまうと、1年先延ばしにしなければならないのかというと、そんなことはありません。2月を逃した場合には、次にチャンスがあるのが8月の竣工です。8月は、大きな企業や官公庁が9月に人事異動シーズンを迎えるため、サラリーマンの引越需要がふえます。そのため、夏場も賃貸需要を拾いやすく、早期満室を狙えるチャンスです。
例えば、ハウスメーカーと建築費が折り合わず、2月竣工のチャンスを逃すようなこともあります。その場合、中途半端に時期をずらすのではなく、8月竣工に頭を切り替えて建築費の交渉を仕切りなおしたほうが効果的です。次のチャンスは半年後と捉えて、腰を据えてじっくりと建築費の交渉を行うようにしてください。
スタートダッシュが重要な理由
では、アパートはなぜ早期満室が重要なのでしょうか。アパートの早期満室は、早期収益化という点で全てのアパートオーナーにとって有益です。中でも、特に家賃保証型サブリースを選択する人にとって重要事項となります。
家賃保証型サブリースでは、一般的に賃料の免責期間が設定されます。免責期間とは、竣工から1か月とか、3か月、6か月等々の期間ですが、免責期間中はサブリース会社からアパートオーナーへ支払われる賃料がゼロとなります。
例えば、免責期間が6か月という契約であれば、竣工してから6か月間は一切の賃料が支払われないということです。アパートは、必ずしも施工後すぐに満室になるとは限りません。サブリース会社が初月から家賃を保証してしまうと、いわゆる逆ザヤ(サブリース会社が受け取る賃料より、オーナーに支払う賃料が上回ること)が発生し、サブリース会社に大きなマイナスが発生するおそれがあります。
そこで、サブリース会社が逆ザヤリスクを回避するために免責期間を設けているのです。この免責期間の長短については特に決まりが無いため、交渉で決定していくことになります。
例えば、立地の良い場所で2月竣工のような物件であれば、免責期間が1か月ということもあります。それに対し、駅から遠い物件や、竣工時期が引越シーズンを外しているような物件等々、条件の悪い物件は、免責期間が6か月のように長くなることもあります。
初年度は、アパートの不動産取得税や登録免許税などの大きな諸経費の支出があります。しかも、これらの諸経費は借入の対象とはならないため、自己資金で用意しなければなりません。
そのような中、免責期間が6か月も設けられてしまうと、大きな負担を強いられることになります。初年度の諸経費負担を緩和するには、少しでも早い賃料の入金が必要です。入金を早くするには、免責期間を短くすることがポイントになります。
免責期間を短くするためには、良い竣工時期を交渉材料とすることが効果的です。2月または8月竣工ということであれば、良い竣工時期を理由に、免責期間を短くしていくことも可能になります。
2月、または8月の竣工を狙うというのは、特に家賃保証型サブリースを利用する人にとっては重要なことなのです。
まとめ
以上、夏場にアパートを竣工させるメリットについて見てきました。2月がダメなら8月竣工を狙って、早期収益化を図るようにしましょう。